『べらぼう』前半戦でもっとも輝いた俳優は? 小芝風花に安田顕…素敵な名優たちとの別れを惜しむ、考察&感想レビュー【ネタバレ】

text by 田中稲

横浜流星主演の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)が放送中だ。貸本屋からはじまり「江戸のメディア王」にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く本作。今回は、第16話までのお話を史実も交えつつ、多角的な視点で振り返る。(文・田中稲)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:田中稲】

ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。

ただの執着男じゃなかった! 鳥山検校(市原隼人)の恋の形

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第13話 ©NHK
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第13話 ©NHK

 怒涛の展開だった『べらぼう』4月。振り返ってみれば、この1か月で、瀬以(小芝風花)、鳥山検校(市原隼人)、徳川家基(奥智哉)、平賀源内(安田顕)、そして白まゆ毛(石坂浩二)まで去っていった。
 
 主要人物がいなくなり過ぎた、混乱の4月を振り返ってみよう。

 4月6日に放送された第14話「蔦重瀬川夫婦道中」は、蔦屋重三郎(横浜流星)と瀬以(小芝風花)がようやく夫婦になりかけたのに、瀬川が身を引き、手紙をおいて去ってしまった。

 何と短い夫婦道中なのか、とクッションを抱いたままゴロゴロとリビングを転がったものだ。

 瀬川を演じる小芝風花ちゃん、粋の極みだった。もう会えないなんて寂しすぎる。カンバーック(泣)!

 瀬以を身請けした盲目の富豪、鳥山検校も、幕府の高利貸し取り締まりにより裁かれてしまう。

 検校たちの高利貸しに苦しんだ人の数はとても多い。言うなれば今でいうウシジマ君というか、闇金融的な感じだろうか。彼からお金を借りた人は高い金利にすべてをなくし、周りからは恨まれていたようだ。

 しかも、夫としても鳥山検校は非常に怖かった。ほぼエスパーじゃないか(震)。見えないのに小さな考えも察するなんて、息がつまる…。それを38歳にしていまだ透明感ハンパない市原隼人が演じているものだから、ストイック風味まで増し増しであった。

 しかし、最終的には「瀬川の面倒を見ることは遠慮したい」と奉行に伝え、「そなたの望みはなんであろうと叶えると決めたのは私だ」と最高の男っぷりを見せるのだ。

 観ているこちらは、ストーカー化、ドロ沼DV化も覚悟していたので、その反動もあり「検校、根はいい人なんだな~(泣)」と、感情が揺さぶられ、情緒不安定になってしまった。

 史実では、鳥山検校は12年後に赦免され復官が許されたというが、その後の人生は明らかになっていない。どうなったのだろうか。幸せであれ。

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