凍也(塩野瑛久)の豹変

『魔物마물』第3話 ©テレビ朝日・SLL
『魔物마물』第3話 ©テレビ朝日・SLL

 あやめは優秀な弁護士でそこらの男性よりも遥かに稼いでいるが、両親からは稼ぎのある夫と結婚し、不妊治療の末に男児をもうけた妹と常に比べられて蔑まれている。ゆえに既婚で子供がいるというだけで勝ち組として扱われる世間の風潮にはうんざりしているのだろう。

 夏音は子供こそいないが“女としての幸せ“を享受しているという意味では妹と同類であり、そんな彼女に見下されたことは屈辱だったに違いない。

 冒頭の法廷シーンでは、夏音をどう思っていたかという検察側の質問に対して「軽蔑していました。あんな女にだけはなりたくないと」と答えている。

 ところが、凍也と出会ったことで愛される喜びを知ってしまったあやめは日を追うごとに自分が見下してきた女たちと同類になっていく。殺人事件の容疑者と弁護人という立場でありながら恋に落ちるというだけでも禁忌なのに、凍也に夢中になるあまり、あれだけ命を賭けていた仕事でも失態をおかしてしまうあやめ。

 そのミスをカバーしようと参加した先方との会食で凍也に告げていた帰り時間にすっかり遅れてしまったことで、彼の本性を知るのだった。年上で自分の方が稼いでいることもあり、どこかであやめは凍也よりも優位に立っていると思い込んでいたのだろう。会食から帰ってきたあやめは「いい子にしてた?」と凍也に微笑みかける。

 すると次の瞬間、凍也に髪の毛を掴まれ、そのまま床に叩きつけられるあやめ。あまりに突然のことで呆気にとられている彼女の体を凍也は起こし、勢いよく拳で殴りつけると、部屋を荒らしながら怒号を吐きちらす。

 だが、おそらく殴られた時に鼓膜が破れたのだろう。キーンというノイズや水中にいる時のようなこもった音が、その衝撃を物語っていた。

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