「冷たい世界」を背負った役者たち

関友太郎、平瀬謙太朗 写真:武馬玲子関友太郎 写真:武馬玲子

 

ーーー香川さんといえば、『半沢直樹』(TBS系、2013-2020)での「顔面芝居」が有名ですが、第一話のゲストである中島セナさんや第二話のゲストである松田龍平さんも、どこか曰く言い難い顔つきの方をキャスティングされていると感じました。このあたりは意識されたんでしょうか。

関 「僕たちの脚本は極力セリフに頼らず、表情や間の取り方、あるいは画面構成などによって映像表現を成立させている傾向が強いと思っています。なので、キャスティングでは、黙っているだけで見てられる、佇まいが絵になる役者さんに惹かれてしまいます」

平瀬「確かに綺麗とか格好いいっていうことを基準ではキャスティングしませんでしたね。重視したのは、俳優さんの持っているトーンのようなものです。とりわけ中島さんに関しては、背後に冷たい世界が広がっているようなゾッとする怖さがあって、第1話の脚本を書いている当初から中島さんのイメージが頭にありました。災いがその人を襲う時に、何故か自然と納得できてしまう、独特の佇まいを持っている役者さんに拘りました」

ーーー現場では、演技指導はされたのでしょうか。

関 「キャストの皆さんが脚本を読んで現場に持ち込んでくれた演技が私たちのイメージとピッタリだったので、具体的なディレクションは必要ないくらいでした。特に松田さんはドンピシャだったので、本当に「よーいスタート、オーケー」くらいしか言うことがなく、逆に『この監督たち、何も言ってくれないな』って思われたらしいです(笑)

あと、4話に出演されているシソンヌのじろうさん。(普段のコントとは違い)ご自身が書いた台本ではないため、「なんでも指示してください」と割と初めの頃に言っていただいたのですが、いざ撮影が始まったら、見事に役が出来上がっていて、こちらはモニターを見て「か、かっこいい…」と感動しているだけでした(笑)」

平瀬「じろうさんがメガネをとって登場した時の異様な存在感は凄かったですね。『あの俳優は誰だ?』みたいな(笑)。あの時は嬉しかったなあ」

ーーー確かにじろうさんは衝撃的でしたね(笑)。ただ、そういった意味では堂本役の中村アンさんがかなり異色だと思うのですが、中村さんをキャスティングされたきっかけはなんでしょうか。

平瀬「中村さんがモデルを務めたヨウジヤマモトの広告写真が決め手でした。ノーメイクの白黒写真で、明るくて快活な中村さんのイメージとはまったく違う1枚でした。最初は誰か分からなかったんですよ。これ中村アンなの?って。みんなが知っている中村アンではなくて、人間・中村アンという感じがしました。実際にお会いしてみたら、その写真の印象に近くて、とても自然体な方で」

関 「中村さんご自身も、『どっちかというと陰キャ』とおっしゃっていて安心しました(笑)。現場では香川さん同様、議論しながらお芝居を柔軟に変えていってくださったので、とても助かりました」

平瀬「中村さんも、僕たちが同年代だったので、気軽に議論ができて、充実した現場だったとおっしゃっていましたね」

1 2 3 4 5 6
error: Content is protected !!