「災い」を表現した不協和音

関友太郎、平瀬謙太朗 写真:武馬玲子関友太郎 写真:武馬玲子

 

ーーー そして、音楽も印象的でした。作曲は加藤賢二さんと豊田真之さん。豊田さんは、お二人と同じ東京藝術大学大学院の佐藤雅彦研究室のご出身で、過去作品では、短編映画『八芳園』(2014)や『どちらを』(2018)でも音楽を担当されています。

関 「豊田君には今回30曲くらい作ってもらいました」

ーーー30曲ですか!

平瀬「映画やドラマの劇伴は撮影や編集が終わってから作曲する場合が多いですが、今回は撮影中から『災い』をキーワードとして、それぞれに何曲も書いてもらいました。実際に劇中で使っているのは、ほんの上澄みですね」

ーーーちなみに、使う楽器は指示されたんでしょうか?

関 「細かくは指定してないですね。ただ、「災い」という、呪術的な目に見えざる力が大きなテーマだと思うので、シンセサイザーなどの電子音よりは生の楽器が合うんじゃないか、とは伝えていました」

平瀬「たとえば、遺体が発見されるシーンで毎回流れる女性の声の曲。あとは、エンディングで流れるピアノの楽曲が代表的ですね。その2曲は豊田の作曲です」

ーーーあのピアノの曲は本当に素晴らしいですよね。徐々に不協和音になっていくピアノの旋律が、日常からの逸脱というドラマのテーマを端的に表現していると感じました。

関 「豊田君は、『考えるカラス〜科学の考え方〜』(Eテレ)や『0655&2355』(Eテレ)などでご一緒しているんですが、『宮松と山下』の時に、改めてすごいな、と感じました。

というのも彼は、本当の意味での劇伴、つまり、映像を説明的ではない仕方で深めてくれるような音楽を作ってくれるんですね。だから最初はなかなか出てこなくてリテイクを重ねていたんですが、最後には出してくれるだろうと信じて粘りました」

ーーーそのあたりも確固とした信頼関係が構築できているからこそですね。

平瀬「いや、正直嫌だったと思います(笑)。何曲書かせるんだよ、って。でも、ガッツがあるし、作品のことを一番に考えてくれるので、僕たちも心置きなくワガママが言えます」

関 「それに、放送が始まって届いた感想では、音楽が素晴らしいという声がとても多いんですよね。なんならストーリーや演出の感想より多いんじゃないかな(笑)」

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