虐待の連鎖、母としての苦しみ

『いつか、ヒーロー』第4話©ABCテレビ
『いつか、ヒーロー』第4話©ABCテレビ

 こうした時代の中で、いぶき(星乃夢奈)は娘・沙織(遠藤くるる)と共に懸命に生きている。10歳の頃、彼女は「イケメン 金持ちの嫁」を夢見ていた。しかし、現実は思い通りにいかないものだ。

 奨学金で資格系の専門学校に進学し、卒業後は非正規公務員として働き、職場結婚をしたものの、夫のDVを理由に離婚し、シングルマザーとなった。配達業と清掃業を掛け持ちし、娘と二人で食べていくのに精一杯の日々を送っている。

 いぶきは沙織の幸せを人一倍願っているものの、母親が自分にしたことと同じことを娘にしてしまう。いぶきは母親の言葉「お前は 幸せになんかなれないよ お前一人幸せになるなんて…絶対許さないから」にとらわれているが、彼女自身も娘に同じ言葉を口にしてしまうのだ。

 娘の誕生日や七五三を心から祝福している一方、もう一人の自分は“私はこんなことしてもらわなかった”という思いから沙織を憎んでいる。だからこそ、児童相談所に自ら通報し、助けを求めた。いぶきは沙織との暮らしを願いつつも、それができる精神状態ではないことも分かっているから…。

 星乃夢奈はいぶきの娘への愛情も娘に抱く複雑な思いもうまく表現していた。星乃は母性的な愛情を漂わせながら、いぶきの心の奥底に潜む過去の呪縛を巧みに引き出し、母としての光と影を見事に演じていた。

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