同じ仲間に出会えた八つ頭(西山潤)
少し前に父を亡くした反橋は、母と弟の面倒を見るために団地に越してきたようだ。いつも、母と弟のために料理を作っているのだが、母が「(弟は)男の子なんだからお肉を食べさせなきゃ」「手料理じゃなきゃダメ」などと価値観を押し付けてくるのだという。
自分のために作る料理は、楽しい。でも、母のこだわりのために作る料理は苦しい。でも、“自分がやらなきゃ”と我慢をしているうちに、お肉を買うのも料理をすること自体もしんどくなってしまった。そんな反橋に、八つ頭は、「逃げてもいいと思いますよ。無理だなと思うこととか、合わないことからは、遠ざかっていいと思います」と声をかけた。
反橋は、八つ頭と会ったときに、孤独な一匹のキツネが雪国で過酷な旅をする絵本を思い出したらしい。そして、さとこや司(宮沢氷魚)、鈴(加賀まりこ)の前で、「終盤でそのキツネが一匹のキツネに出会うんです。同じ仲間に会えて、それだけで二匹のキツネはたまらなく嬉しくて。わたしも、そんな気持ちになりました」と言い、微笑んだ。
きっと、八つ頭が過ごしてきた5年間は、想像を絶するほど過酷な日々だったと思う。でも、どうにか生き延びてきたからこそ、光のような存在と出会うことができた。
むしろ、苦しい経験をしてきたから、反橋の心を照らすような声をかけることができたのだろう。そう考えると、人生捨てたもんじゃないなと思えてくる。