イラッとするのに憎めない…。
この「少しイラッ」が絶妙なのはやはり演じる新納の独特の演技力によるものだろう。イラッとするのに憎めない…。この「憎めない」が実は今回、とても重要だ。娘の陽菜は、父と距離を取りつつも嫌っているわけではない。
むしろ、陽菜のほうが父親にあまり好かれていないのではないか、という不安感を持っていた。須永が根っからの「嫌な人」だったら成り立たない設定だ。
ただ、会社での様子からも感じ取れる通り、須永は良い父でも、良い夫でもなかった。育児のことは妻に任せきり、娘のイベントにも顔を出さない。これが今回の『日の出鉛筆』に根付く問題点のひとつにつながる。
『日の出鉛筆』では男性の育休も認められているものの、社長の小笠原(小野武彦)は否定的。男が育休取って何するんだ! という考えである。
いかにも小笠原が言いそうなことであるが、回を追うごとに常務取締役の里井(小日向文世)がクーデターを起こして社長になったほうがいいのでは、と思ってしまう…。
須永自体は離婚し、陽菜と会う機会が減ってしまったことで子どもの成長を見守る大切さを実感したようだ。今回の件がきっかけで、男性の育休に関する研修の提案も行う。小さな一歩だが、須永にとっては大きな変化だ。