死しても源内の功績は消えない――。

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第17話 ©NHK
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第17話 ©NHK

 一方、落成した城を視察するために、領地である遠江国の相良藩を訪れた田沼は現地の民に感謝を持って迎えられる。田沼が街道や港を整備した結果、商いが活性化し、相良藩には運上冥加が多く入った。そのおかげで年貢を一切上げることなく城を普請することができたそうだ。

 もともと街道や港の整備は城の普請の後でもいいと考えていた意次。しかし、「まず民が使うものを先に整えるべき」「何より民が富む仕掛けを作る。さすれば、田沼はおのずから富むことになる」と源内に言われ、考えを改めたのだった。

 ロウの原料となるハゼの木を植えるというアイデアを思いついたのも源内だ。ロウは今や相良の名産となっており、稲作以外にも仕事が増えたことで百姓の生活も豊かになった。

 肉体が朽ちても、その人の功績や強い意志は決して消えない。源内の影響が残る光景を意次は誇らしげに、されど、どこか寂しそうに見つめていた。

 江戸に戻った意次は「幕府が、俺の指図どおりに動けば、江戸を、ひいてはこの国をすべて相良と同じように源内が描いた豊かな国になる」と幕閣での権力をさらに強めていこうとする。だが、往往にして力を持つ者は知らず知らずのうちに敵を作り、恨みを買うもの。

 以前、旗本の佐野政言(矢本悠馬)が持ってきた系図をあろうことか池に捨てた意次。それを気にする息子の意知(宮沢氷魚)がせめて佐野を良い役職につけてやってほしいと提言するが、意次は跳ね除ける。史実を知っている人は、思わずハラハラする展開だ。

 人生は別れと出会いの連続。かをり改め、花魁・誰袖役の福原遥、唐丸の正体であることを匂わせる喜多川歌麿役の染谷将太をはじめとする新キャストを連れてスタートする新章に引き続き期待したい。

【著者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

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