悪気のない親切心が「枷」になる
では、なぜ晶子は疑問を持ちながらも、そのレールから脱しようとしないのか。
それは周囲の「悪気のなさ」「親切心」を無碍にできないという気持ちからくるものだった。
しかし、そんな晶子に主人公・詩穂(多部未華子)は言う。「向こうに悪気があろうがなかろうが関係ないんです。だって、晶子さんは傷ついてるじゃないですか。だから逃げてもいいと思います。そういう人からは逃げてもいい」と。
この言葉、決して、子作りプレッシャーに悩む視聴者だけが共感するものではない。なぜなら、相手の善意に見える言葉やふるまいが、気づかぬうちに誰かを傷つけてしまうことは、日々の暮らしのなかに静かに広がっているからだ。
理不尽や明確な意地悪ではない「あなたのためを思って」という言葉に苦しんだ経験は誰だってあるだろう。そう考えると、このドラマは作中に描かれる特定の人物、そして、その誰かと重なる境遇の人だけを対象とした作品では決してないと言える。
実際、このドラマは“家事”という終わりなき仕事をテーマにした新たなお仕事ドラマと謳っている。お仕事=ビジネスではない、自分の目の前にある何かに仕えている人、全員を対象にしたドラマなのだ。