経験を通してアップデートされるキャラクターたち
そんな『対岸の家事』もいよいよ後半戦。ここからの見どころとなるのは、このドラマの軸ともいえる、モヤモヤとした感覚と、それに対してアップデートしていくキャラクターたちの姿だろう。
それが顕著に描かれると予想されるのが、5話の終わり、礼子(江口のりこ)が開けてしまった詩穂に当てた差出人不明の手紙だ。「あなたのような専業主婦はお荷物です」と書かれていた、その手紙を見て、礼子は絶対に詩穂に見せまいと決意する。
しかし、考えてみてほしい。1話の冒頭、2023年当時、礼子は詩穂のことを「今どき、専業主婦になってどうするんだろうね」「時流に乗り遅れた絶滅危惧種」と陰口を叩いていたことを。
「仕事も家事も両方やるって自分で決めた。私は間違っていないって」思いたくて、もともとは自分を正当化するためにしほを小馬鹿にしていた礼子が、今や詩穂を守っているのだ。
これは、礼子が自分が描いていた“ワーママ”としての働きぶりを実際に経験してみて「家事なんて片手間でできる」というのが無理だからと気づいたからだろう。このドラマに描かれている礼子というキャラクター像からも分かるように、人は少しずつ時間や経験、他者との交流を積み重ねて考えが変わるものだ。