問われるのは、私たち自身
最後まで日曜劇場らしい展開で、JBNの内通者と警察側の不祥事を露わにして、村崎参事官が隠ぺいしていた黒い噂を突き止める。第1話の不完全燃焼な結末と比べると、清々しいほどの勧善懲悪だった。
ただ「報道」を舞台にしているこのドラマでは、悪を裁いたところで物語は終わらない。番組で事件のスクープを報道した後に、進藤は組織の権力構造について持論を展開する。
表情をほとんど変えずに淡々と、しかし重みを増していく阿部寛の長台詞には、その場に居合わせた人だけでなく、画面を通して観る我々さえも引き込まれていく。一言一句に耳を傾けさせる説得力が、阿部の芝居には込められていた。
最後に進藤は「あなたはこの現実を受け入れるのか。それとも疑問を抱き続けるのか。考えるのはあなた自身です。この言葉があなたに届くことを心から願います」とスピーチを締める。
この言葉の宛先は「ニュースゲート」を視聴する人々だけでなく、番組制作に関わる裏方の人間、果ては過去に真実を葬りさった黒幕に向けてのものだろう。そして、進藤が指す「あなた」は、このドラマを観ている視聴者にも当てはまる。
理不尽を飲み込んで沈黙を選ぶ。組織や立場のために良心に蓋をする。それらの現実を受け入れたことがある人ならば、進藤が紡いだ言葉はきっと他人事ではない。筆者も他ならぬ「あなた」として、この物語の真相を見届けたい。
【著者プロフィール:ばやし】
ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。
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