子どもに迷惑をかけたくない知美(田中美佐子)の苦悩

『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』第7話©TBS
『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』第7話©TBS

 子に迷惑をかけることを一番避けたいとする知美の苦悩もよくわかる。自分が自分でなくなっていくような感覚を覚え、かけがえのない娘という存在さえ認識できなくなってしまう未来というのは恐怖そのもの。それを恐れて逆に動けなくなってしまう状態は痛いほどに共感できるし、自分ごととして考えてしまった人も多いだろう。

 ただ、詩穂にはそうしたしがらみも軽やかに乗り越えていく優しさがある。困っている人がいたら手を差し伸べる。苦しんでいることがあったら一緒に解決策を探る。

 今回の件は、子育てで孤独感に苛まれていた時期に知美に救われた恩というのも多分にあるのだろうが、見返りを求めずに礼子(江口のりこ)や晶子(田辺桃子)を助けてきた彼女を私たちは十分すぎるほどに見ている。

 詩穂にとっては、家事だろうが、子育てだろうが、そして介護だろうが、困っていれば手を差し伸べるというのが選択肢の最初にあるのだろう。

 詩穂が献身的に寄り添うことで徐々に知美も前を向き始め、認知症ときちんと向き合うことに。最初は他人の介入に対して否定的な見方をしていた里美も最後には素直な感謝を伝えるのだった。

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