「俺のために生きてくれ」
蔦重(横浜流星)の覚悟が滲む

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第14話 ©NHK
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第14話 ©NHK

 自分が自分を許せず、「俺を助けたいみてえなこと言ってたけど、助けちゃいけねえんだよ、俺みたいなゴミは。さっさとこの世から消えちまった方がいいんだ」と吐き捨てる。

 けれど、「俺ゃお前のこと助けらんねえわ」という蔦重に言われた瞬間、見捨てられた子供のような顔をした唐丸はどこかで助けてほしいと願っているのだろう。

 蔦重もまた、そんな唐丸を救うことで救われたかった。「あの時の約束、守らせてくれ。お前を当代一の絵師にする。だから死ぬな。俺のために生きてくれ」という蔦重の言葉には、瀬川(小芝風花)や平賀源内(安田顕)との悲しい別れを経験してきたからこその強い覚悟が滲む。

 かつて駿河屋から逃げ出した元奉公人の人別(※戸籍)を使い、歌麿として再出発することになった唐丸。「麿」の字から公家の出と噂が広まり、いずれは内裏に絵を描くという蔦重が語る夢物語に「そんなにうまくいくわけあるかよ」とようやく笑顔を見せた時、「ああ、本当に唐丸だ」と思った人が多いのではないだろうか。染谷将太の表情や喋り方に、子役の渡邉斗翔が演じていた頃の唐丸が生きている。

 なお、唐丸の正体については視聴者の間で様々な考察が飛び交っていたが、今回で喜多川歌麿であることが明確になった。喜多川歌麿は生年や出身地などの記録が残っていないため、本作で描かれていることの多くは創作だが、子供の頃に鳥山石燕(片岡鶴太郎)から絵を教わったというエピソードだけは史実に基づいている。

 もう一人、唐丸の正体として有力候補だった謎多き絵師・東洲斎写楽は誰が演じることになるのか。キャストの発表を楽しみに待ちたい。

【著者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

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【了】

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