患者にとって最高の治療とは

『Dr.アシュラ』第5話©フジテレビ
『Dr.アシュラ』第5話©フジテレビ

 朱羅がかねてより行ってきたのは、命だけでなく患者のすべてを救う治療だ。バイオリニストの里穂にとって、「バイオリンを弾くこと」は命と同等、もしくはそれ以上に大切なことである。里穂が「先生のおかげでまた生きていこうって思えた」と語ったように、朱羅の“すべて救う”は、患者に生きるエネルギーを与える。それは、患者にとってなによりも最高の治療といえるのではないだろうか。

 一方、朱羅のやり方に難色を示すのがナオミだ。彼女は以前アメリカの病院にいたため、国による医療や働き方の違いも朱羅との意見の不一致に影響していたのだろう。たとえば、当直明けもそのまま働こうとする薬師寺保(佐野晶哉)に驚いていたナオミ。アメリカとは違い、時間外労働を当たり前のように行う朱羅たちの働き方をみて、自己犠牲だと口にする場面もあった。

 そんなやり取りがあったのち、他院から転送される形で運ばれてきたのが、交通事故で右腕を切断された里穂だった。勤務時間が終了したナオミは帰宅しようとするが、形成外科医の彼女がいなければ腕の再接着は不可能な状況。

 最初は「アシュラ先生もいるし、命は助かるでしょ」と発するナオミだったが、保の「でも僕は佐竹さんが腕を失うなんて嫌です、これからもバイオリンを弾かせてあげたいんです」の言葉には思うところがあったのだろう。一度病院をあとにしたナオミが再び治療室へと舞い戻ったシーンは、胸がじんと熱くなる瞬間である。

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