誠司と公威(北村有起哉)は似ているようで異なる
誠司と公威(北村有起哉)は他人から傷つけられ、強くなるために必死にもがいてきた。その結果、頂上から見える景色を知ることもできた。しかし、二人は似ているようで異なる。
誠司は騙された父の仇を打つかのように、買収を無慈悲に繰り返してきたが、自身の利益だけを追い続ける日々に耐えられなかった。ある企業の株価が100円を割ったら従業員を解雇しろと会社から命じられたとき、私財を投じて株価を支えたという。
その結果、会社を解雇された。また、誠司はベトナムに学校を建てる夢を叶えるために希望の道を去ると教え子たちに話していたが、これは優しいウソであった。彼はベトナムではなく、自分の罪を告白し、法の裁きを受けるつもりだったのだ。そして、自分の過去を整理した後、教え子に再び会うつもりでいた。
一方、公威は子ども時代に親から兄弟と比べられた苦しみを未だ意識しており、「今だけ、自分だけ、金だけ」の生き方をつらぬいている。また、自身のビジネスに邪魔だと思えば、その存在を消し去ることも厭わないようだ。6話では20年前に海辺で誠司を気絶させたのは、公威の部下だとほのめかすシーンがあったし、前回は希望の道の園長・司(寺島進)や自身の家族の命を奪った可能性もほのめかされていた。
他者によって心を傷つけられた者は社会をうらむため、世の中を渡り歩くハードルが上がる。他人に優しさや愛情を注げなくなるのも仕方ないと個人的に思う。
しかし、誠司のように手を差し伸べてくれた恩師(=司)がいたり、自分が守りたいと思える人(=教え子)がいたりすると、他者を愛する力が湧き、社会を広い視野で見渡せるようになるのかもしれない。つらいときにも穏やかに笑っていられることが“強さ”だと気づいたとき、これまでとは違う自分になれる。
公威は本作における悪役であるが、彼の苦悩やつらさを思うと、過去から解放され、幸せになってもらいたいと思う。