なつ美(芳根京子)と瀧昌(本田響也)に思う結婚の意味
また、2人を見ていると結婚することの意味のようなものも考えさせられる。瀧昌の同僚・深見(小関裕太)は、「結婚は、しょせん家を守るために夫婦になり、跡目のために子を儲ける制度でしかないからな」と言っていたが、なつ美と瀧昌は違う。
他人に心を開くのが苦手な瀧昌は、両親を亡くしてから、ずっと本心を自分の内に秘めたまま過ごしてきたのだろう。彼の気持ちも、理解できる。辛い話をして、相手を暗い気分にさせてしまったら…とか、どうせ分かってもらえるはずないという諦め。さまざまな感情が、瀧昌のなかにあったのだと思う。
しかし、なつ美と結婚して、新たな“家族”ができた。彼女は、「瀧昌さまの両親が亡くなった時のこと、その後どうしていたのか」を知りたいと言ってくれる。「あなたに重荷を背負わせることになる」と言っても、「背負いたいんです。一緒に背負わせてください」と返してくれる。
そして、亡くなった父の恩給を親戚が横取りしていたことを話したら、「ありえない! その家に乗り込もうかしら! それがいい!」と激怒してくれた。夫婦になるって、家族になるって、相手の苦しみを共有することなのかもしれない。そうすれば、苦しみは2分の1になる。
おそらく、瀧昌はずっと親戚に対する恨みを抱えていたのだろう。だけど、なつ美がブチ切れてくれたことで、吹っ切れたのかもしれない。「知りませんでした。誰かが怒ってくれると、こんなにスッキリするんですね。なつ美さんに話して良かったです」と言った時の瀧昌の表情は、憑きものが落ちたように清々しかった。これに、「わたしも、瀧昌さまをもっと知ることができて良かったです」と返すなつ美も素敵だ。