等しくない愛が、等しく傷を残す
激昂する凍也(塩野瑛久)に訳も分からず殴られたあやめ(麻生久美子)は腫れた顔をメイクで隠し、翌日も会社へ向かう。「愛し愛された人に殴られたこと」のショックより、「暴力で屈服させられる女だと思われたこと」に対する腹ただしさの方が上回るところがあやめらしい。
プライドの高さは自分を守るための盾。あやめは第1話のDV講習で「あなたは煮立った鍋の中で既に半分茹でられたカエルです。完全に茹で上がってしまう前にその場所を飛び出して下さい」と語っていた通り、すぐさま凍也の連絡先を消し、ばっさりと関係を絶った。
そんな鉄壁の女を揺さぶるのが、凍也のある種の純粋さだ。我に返った凍也はあやめに許しを乞う。だが、拒絶されるや否や、「俺はこんなにもあなたを愛してる。なのにどうして同じくらいの愛情を返してくれないの?」「俺がどんなに苦しんでるか、想像くらいしてみろよ!」と声を荒げる様は、まるで駄々をこねる子供のようだった。
その後も幾度となくあやめの自宅ポストに花束を投函し、関係の修復を試みる凍也。第2話の回想シーンから察するに、彼は母親に捨てられている。もしかしたらあやめに求めているのも「母親」なのかもしれない。
凍也があやめに贈ったカーネーションも母の日のシンボルだ。またオレンジ色のカーネーションは「純粋な愛」「清らかな慕情」「あなたを愛します」「情熱」といった花言葉を持つが、まさしく凍也そのものを表している。その狂気と表裏一体の純粋さに、あやめは惹かれたのではないだろうか。