狂気と表裏一体の純粋さ

『魔物마물』第4話 ©テレビ朝日・SLL
『魔物마물』第4話 ©テレビ朝日・SLL

 凍也を拒むことが、やがて自分への罰のような気がし始めたあやめは、陽子(神野三鈴)に誘われたパーティーでの再会をきっかけにふたたび彼と関係を持つことになる。「少しだけ時間を」という不倫男の常套句もスルーし、車の中で凍也と激しく体を求め合うあやめ。それが転落への一歩になるとは知らずに。

 時を同じくして、夫・凍也の不倫に気づいた夏音(北香那)。彼女の過去はまだ明らかになっていないが、「賢く自立した女性」への強烈なコンプレックスがある。

 その典型とも言えるあやめに愛する人を奪われたとなったら、許せないのが女の心理というものだろう。夏音もまた徐々に狂気を帯びていき、あやめの職場で果物の種から採取した青酸カリによる自殺未遂を起こす。“魔物”の妻もまた“魔物”と言うべきか。

 その結果、依頼人との不適切な関係が明るみになり、あやめはこれまで積み上げてきたものを一挙に失ってしまった。失うものが何もなくなった人間はある意味で最強だ。あやめは「夏音がいなくなった」と家を訪ねてきた凍也の手を「私と一緒にいよ?」と引き、自宅に招き入れる。

 凍也はあやめを選んだように見えるが、心に引っかかるのは夏音がいなくなったことによる憔悴ぶりだ。回想シーンで凍也と夏音の過去が一瞬だけ映し出されたが、おそらく2人には離れられない強固な理由がある。まずもってすんなり凍也が夏音と別れることはないだろう。

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