木村(千葉雄大)の長すぎた青春
売れないまま15年以上の時が経ったビレッジマウスは、互いへのリスペクトや自分たちへの期待がなくなったわけではないものの、健全なコミュニケーションが取れているとは言えない状態だった。そんな折、かつて優勝したお笑いコンテスト番組が、一夜限りの復活をすることに。
コンテストに挑戦することを決め、入念なネタ合わせをする2人は、まるで高校生の頃に戻ったみたいに楽しそうだ。比例するように、ネタの精度もどんどん上がっていく。ビレッジマウスの奮闘ぶりを近くで見守っていた道子のなかに、解散させたくないという気持ちが膨らんでいく。
しかし、道子のいないところで、木村は溝口に「決勝に残れなかったら解散しよう」と切り出す。久しぶりにやってきた大きなチャンスに、足並みをそろえて向き合うことができたこの瞬間が、引き際だと思ったのだろう。これを超えたら、また辞め時を見失ってしまうから。溝口は、賛成も反対もせず、木村の言葉を噛みしめているように見えた。
迎えたコンテストの本番。2人のネタはしっかりウケていたものの、結果は不合格。「がんばるだけじゃ、ダメな世界だから」と、目に涙を溜めて、木村は犀川のもとへ挨拶に向かった。自分への不甲斐なさと悔しさと、終わりゆく青春への無念と。強く想うだけではどうにもならないものを前にしたときのやるせなさが過る。
実は木村は、自ら解散を申し出ておきながら、コンテストでのネタ見せのあとに、「やっぱりお笑いに専念しようと思う」と溝口に打ち明けていた。しかし溝口は、今度は明確に反対の意思を見せ、「友だちに戻ろう」と伝えたのだった。
解散を止めようとしていた道子だったが、結果を受けて覚悟を決めた2人に対してできることはもう何もない。晴れやかな表情で笑い合う2人を見て、悔しさをこらえながら涙を流す。長すぎた青春のなかで、苦しかった時期を経て、やっと友だちに戻れた木村と溝口の新しい人生が好転していくことを願わずにはいられない。