娘たちが見せた別の顔
違う顔を持っていたのは、娘たちも例外ではない。家に訪ねてきた雪子(原日出子)が紘海の勤めていた保育園の園長だと見抜いた美海(一色香澄)は、“母には聞けないこと”を尋ねる。美海が知りたかったこと、それは“父親”のこと。辻褄を合わせるためなのか、父親は病気で亡くなったことになっていた。
父親と過ごした日々の記憶がなく、写真も見たことがないというのだから、自分のルーツが気になるのは当然のことだろう。でも、それと同時に、美海は母と自分の親子関係が“普通ではない”ことに、うっすらと気づき始めているのかもしれない。
美海が紘海に聞けなかったのは、それがなんだか聞いちゃいけないことのような気がしたから。そしてそこには、聞いてしまえば何かが壊れてしまいそうな予感もあったのだと思う。
だから美海は、紘海の前では父親の話に興味のないフリをしている。紘海が見ていた美海の一面は、彼女の母への思いやりによって作られたものだったのだ。
結城家の長女・梨々子(平祐奈)にも、別の顔がある。家を出ること、結婚を考えている相手がいることを旭に話さなかった梨々子。そのことを咎められたとき、「ママが出てって、萌子があんなことになって、私まで出てったらパパどんなに悲しむだろうって」とすすり泣く。
父親に「因果応報」と強い言葉をぶつけていた頃を思い出すと違和感しかないが、梨々子にも心に秘めたものがあるようだ。彼女の底知れぬ腹のうちは、「自分以外の誰かがどう考えているかなんて簡単にはわからない、家族ですら」と現在進行形で旭を悩ませている。そして、玖村(阿部亮平)もまた、彼女のさまざまな一面に振り回されているひとりだ。