『あなたを奪ったその日から』第5話考察＆感想。大森南朋の「悪人」イメージが一変…同じく「裏の顔」を見せたキャストとは？【ネタバレ】

食品事故で一人だけ切り捨てられた社員がいる？

　もっとも、一番知られてはいけない顔を持っているのは紘海だろう。美海（萌子）を誘拐し、旭に復讐心を燃やす。でも、そのときどきで垣間見えるのは、娘を大切に育てる母の姿。多かれ少なかれ、人はなにかを抱えていて、どうにか努力して取り繕いながら生きている。その姿は、とても人間味にあふれていて。だから紘海のことも、たんなる“悪”とは括れないのだろう。

　食品事故に関しても、ストーリーが進んだ。砂羽（仁村紗和）と接触したことで、望月耕輔（筒井道隆）のなかに食品事故への疑いが芽吹いてしまう。「YUKIデリ」惣菜店の調理責任者・鷲尾勇（水澤紳吾）は、元社員たちが「タイナス」へ転職するなかひとりだけ切り捨てられた。だが、望月は長く旭のそばで働いてきたにもかかわらず、その事実を知らなかったのだ。

　望月が旭に事故の件を問い詰めたことで、彼らの長年の信頼関係に暗雲が立ち込めてきている。さらに、鷲尾による告発動画が紘海たち社員のもとに届いたことで、事故をめぐる物語も大きく動かざるをえなくなってきた。

　そんななか、本回で優しさを感じたのは、雪子が美海の存在を不可解に思いながらも多くは聞かなかったシーンだ。事情があることを鑑みながら、待つ姿勢をとってくれた雪子に紘海もきっと救われたはず。どんどんサスペンスに磨きがかかってくるが、次週も、こんな柔らかな時間があればいいなと思う。