ドラマ『キャスター』第6話考察レビュー。中村アンの渾身の演技とは? 阿部寛”進藤”の「正論」が視聴者に刺さるワケ【ネタバレ】
text by ばやし
ドラマ『キャスター』(TBS系)が現在放送中。本作は、テレビ局の報道番組を舞台に闇に葬られた真実を追求し、悪を裁いていく社会派エンターテインメント。3年ぶり6回目の日曜劇場主演となる阿部寛が、型破りなキャスターを演じる。今回は、第6話のレビューをお届け。(文・ばやし)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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日本の臓器移植制度が抱える矛盾
感情論と理論。当事者と第三者。登場人物たちは、自身の立場と抱える感情の矛盾に葛藤しながら、自身を支える「正しさ」と激しく衝突する。
ドラマも後半戦に差し掛かるなか、第6話で大きなテーマとして描かれたのは、日本の臓器移植制度が抱える矛盾。冒頭で「ニュースゲート」の取材に応じる藤井真弓(中村アン)は、脳死と診断された夫の肺を娘に移植したいと視聴者に訴えかける。
そもそも日本の臓器提供数は、海外と比べると極めて少ない。その原因となっているのが、書面での意思表示と家族の承諾の必要性だ。海外では臓器提供の意思を表明することがスタンダードとされているが、日本では意思があったとしても、書面での表示をしていない人が圧倒的に多い。
「脳死」に対しての考え方の違いも大きな要因と言える。日本では本人が意思を表明していない場合、臓器提供するかどうかは家族の判断に委ねられる。ただ、心臓が動いている血縁者の「死」を認めることが、どれだけ苦しく困難を伴うことかは言うまでもないだろう。
華(永野芽郁)は藤井さん一家の実情と、日本の臓器移植制度の問題点を熱心に解説する。さらには、進藤(阿部寛)の言葉を遮ってまで、視聴者に迅速な法改正の必要性を訴えかける。彼女の真剣な表情には、総合演出としての立場を逸脱するほど、個人的な感情が滲み出していた。