「千明さんと一緒にいると、幸せです」
ウソの中の真実
千明は、還暦を前に独り身である娘の心配をしている母に、「隣に住んでる人と、将来の約束はしたよ」と伝えたらしい。たしかに、ある意味ウソではない。
第1話の冒頭でも、和平が千明に「約束したじゃないですか。どんな形であれ、ずっと一緒に生きていくんでしょ? わたしとあなたは」と語りかける場面があったし、2人の間では暗黙の了解のようになっているのだろう。
というわけで(?)、和平は千明の“事実婚の恋人”に扮して、里帰りに同行することに。ドラマでは、こういう描写はかなり多く登場する。
ただ、だいたいの場合は、双方にまったく感情がないことが多い(あとから芽生えることもあるが)。そのため、ウソがバレたらどうしよう…というスリルを楽しむことになるのだが、千明と和平の場合は本当の部分もあったりする。
たとえば、千明の母・有里子(三田佳子)に「千明のこと、よろしくお願いします。宝物みたいな子なんですよ。わたしたちの」と言われて、「分かりました。こちらこそよろしくお願いします。千明さんと一緒にいると、幸せです。楽しいです。わたしが」と返した和平の言葉には、真実が詰まっていたように思う。
鎌倉男子の和平は、ウソをついたり、その場を取り繕ったりするのが苦手だ。有里子が千明のことをどれだけ大事に想っているかという話を聞かされたあとに、「よろしくお願いします」と託された。
そこで、軽い気持ちで「分かりました」と言えるような男ではない。もしも、その想いを背負う覚悟がなかったら、「実は…」と本当のことを明かすだろう。千明も、それを分かっているはずだ。