惠子(朝加真由美)なりの愛情
SNSでは“毒親”と揶揄されることも多い惠子だが、彼女の気持ちも分からなくはない。大事な娘が難病になったことで、後ろ向きに生きるようになってしまった。その姿を見ているだけで、惠子はしんどいのだろう。
治らないと言われている病気だって、いつか治るかもしれない。この子には奇跡が起きるはず。そんな願いを込めて、「あんたは治るかもしれないでしょ。そうそう諦めることないわよ」と伝えたのだと思う。
ただ、さとこからすれば、「わたしがとっくに諦めたこと、まだ可能性あるみたいに言われると、気持ちがザワザワするでしょ。食べられないごちそう、目の前に並べられているみたいで」と言いたくなるのも分かる。さとこはきっと、この病気は治らないんだと理解するまで、さまざまな葛藤を乗り越えてきたのだろう。
そして、やっと受け入れて、“今”に目を向けられるようになった。そんな時に、「“過去”の自分に戻れるんだから」と言われ、苦しくなってしまったのだと思う。
さとこの立場になって考えると、惠子はたしかに“毒親”だ。でも、わたしが惠子の立場だったら。大事な人が難病になり、「もう一生治らないんだから」と後ろ向きになっている。そんな時、「そうなんだ。じゃあ、仕方ないね」と簡単に受け入れられるだろうか。
ただ、惠子がしていることは、相手の心を追い詰める行為でしかない。本当にさとこのことを想っているのなら、膠原病について調べ、どうすれば症状が緩和されるか…など具体的な解決策を伝えてあげたらいいのになと思った。惠子は、愛情の注ぎ方が、ちょっぴりズレている気がする。