『べらぼう』キャラに共通する、去り際の美学
もう一人、今回で退場になったのは、かぼちゃの旦那こと大文字屋(伊藤淳史)だ。最近はめっきり蔦重に協力的だったが、当初はとんだ忘八だった大文字屋。
よろよろの状態で誰袖(福原遥)に無理やり「蔦重に500両で身請けを許す」という証文を書かされたのも、これまで女郎たちを散々働かせてきた報いと言えよう。無事に禊も終え、なんだかんだ憎めないキャラクターとして視聴者に見送られた。
また江戸城では、時の将軍・徳川家治(眞島秀和)が亡き正室・五十宮とそっくりな鶴子(川添野愛)と子作りに励む中、知保の方(高梨臨)が毒による自害騒ぎを起こした。
知保の方は無事だったが、毒を使った一連の事件に違和感を覚えた家治。さらに、一橋家だけ後継ぎが残っていることから、治済(生田斗真)の関与を疑う家治は子を断念し、養子を迎えることを決意する。それは、松平武元(石坂浩二)の死を受け、田沼意次(渡辺謙)たち家臣を守るためでもあった。
「十代家治は凡庸な将軍であった。しかし、1つだけ素晴らしいことをした。それは田沼主殿頭を守ったことだ。余は後の世にそう評されたい」
意次はその言葉に思わず涙しながら、改めて家治に生涯尽くすことを誓うのだった。本作のキャラクターには共通して、去り際の美学がある。改めてそのことを実感する回だった。
【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
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