結局のところ誰も幸せではない
仕事で成功を収めたあやめと、女としての幸せを享受する夏音、そしてその両方を手に入れた陽子。立場は違えど、特筆すべきは誰も本当は幸せではないということだ。
何より言葉を選ばずに言うならば、彼女たちを取り巻く男たちがクソすぎる。愛を欲しがるばかりで自分は与えようとしない凍也も、仕事で成功している妻に嫉妬し、別の女に入れ揚げる奥太郎も。
特にクソなのは、あやめが所属する法律事務所の代表・井村(宮崎吐夢)だ。まるで罰であるかのようにあやめを大手ゼネコン・丁賀建設の案件から外し、代わりに同社専務の女性トラブルの処理を押し付ける井村。
さらには専務からの差し入れである重箱に入った餅を吐くまで食べさせ、遠回しにあやめを侮辱するシーンはこちらまで吐きそうだった。
相対的に評価が上がるのは、あやめの同僚・今野(大倉孝二)。一応はライバルでありながら仕事で干されたあやめを気にかけ、吐いている彼女を懸命に介抱する姿に好感が持てる。
結婚さえしていなければ…と思わずにはいられない。既婚の身でかつて関係を持ったあやめにあわよくばという下心を見せていることを考えたら、今野も純粋に良い男ではないのだ。
本作はそんな男たちに苦しめられた女たちがやがては逆襲するまでを描く、ある種のフェミニズム作品なのかも知れない。
【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
【関連記事】
・【写真】塩野瑛久の豹変ぶりがヤバすぎる…貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『魔物마물』第5話劇中カット一覧
・ドラマ『魔物』第4話考察&感想。画面から伝わる監督のへこだわりとは?【ネタバレ】
・ドラマ『魔物』第3話考察&感想。松任谷由実の楽曲が思い起こさせるものとは?【ネタバレ】
【了】