『しあわせは食べて寝て待て』最終話考察&感想レビュー。今期屈指の良作だった…全9話を通して語られたメッセージとは?【ネタバレ】

text by 菜本かな

桜井ユキ主演のNHKドラマ『しあわせは食べて寝て待て』が完結を迎えた。本作は、病気で人生が一変した主人公が、築45年の団地での人間関係と薬膳との出会いを通して、自分次第のしあわせに気づいていく心温まる物語。今回は、最終話のレビューをお届けする。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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自分をいたわる暮らし

『しあわせは食べて寝て待て』最終話 ©NHK
『しあわせは食べて寝て待て』最終話 ©NHK

 ついに、最終回を迎えた『しあわせは食べて寝て待て』。主人公のさとこ(桜井ユキ)にとって、薬膳との出会いは“自分をいたわる暮らし”の始まりだった。自分の健康のために食材を選び、自分の心を満たすために料理をする。そんな日々を積み重ねるうちに、少しずつ自分をいたわる気持ちが芽生えていったのだろう。

 さとこの病気である膠原病は、自己免疫疾患のひとつで、慢性的なストレスが病気の引き金になることもあると言われている。よく、“病気は身体からのSOS”なんて言葉を耳にするけれど、さとこが膠原病になったのも、「今の生活を変えなければ」という身体からの警告だったのかもしれない。

 全9話を通して、さとこは少しずつ生活を見直していった。働きやすい職場を探し、生活しやすい住まいへと引っ越す。そうするうちに、だんだんと性格も変わってきたのが、画面越しから伝わってきた。

 たとえば、病気になる前のさとこは、我慢しすぎるところがあった。わたしも同じようなタイプだから、すごく気持ちが分かる。嫌なことをされても、「ごめんね」と謝られたら、許してあげなきゃ…と思ってしまうし、「あなたに話を聞いてもらうとラクになる」なんて言われたら、どんなに体調が悪くても、聞いてあげないと! という気持ちになってしまう。

 けれど、今のさとこは違う。大学時代の友人に、「久々に電話していいかな? 旦那といろいろあってモヤモヤしてて…。わたし、さとこに話を聞いてもらうと元気になるんだよね」と言われた時、「ごめん。水曜日は、身体を休めるために休みをもらってるんだ。だから、電話もしたくないんです。本当にごめんね」と断ることができた。きっと、以前のさとこなら、無理をしてでも話を聞いてあげていたはずだ。

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