「新しい自分になった」
正直、「もう少しやわらかい断り方があったのでは?」とも思うが、さとこはきっと断り慣れていないのだろう。だからこそ、ちょっぴり突き放すような形になり、相手を怒らせてしまった(?)わけだが、これからうまい断り方を身につけていくはず。
それに、自分のことばかりバーっと話して、相手の状況を顧みないような人とは、少し距離を置いた方がいい。ある意味、“人間断捨離”だ。
さとこは、司(宮沢氷魚)と電話した時に、「一瞬、わたしは冷たい人間になったんだなと思ったんですけど、いやそうじゃないって考え直しました。わたしは、やっと自分を大切にできるようになったんです」と言っていた。
たしかに、自分を大切にしなければ、他人を思いやることなんてできない。人助けは、余裕がある時に、できる範囲ですればいい。わたしも、少しずつではあるが、さとこのような考え方ができるようになったらいいな…と思った。
大学時代からの友人の電話を断ってしまったあと、さとこはしきりにスマホを気にしていた。「傷つけていないかな?」「怒ってしまったかな…」といろいろ考えて、不安になったのだろう。しかし、自分で作ったおでんを食べた時、さとこは極上に幸せな顔をしていた。彼女は、自分で自分の心を満たす術を身につけたのだ。
団地に引っ越してくる前のさとこは、「病気になる前の自分に戻りたい」と後ろ向きになっていた。しかし、はたから見ると、前のさとこよりも、今のさとこの方が自由で幸せそうに見える。鈴(加賀まりこ)も言っていたように、前の自分と比べるから、しんどくなるのだ。
「新しい自分になったんだ」と思えばいい。病気になってしんどい思いをしているのだから、少しくらいプラスになるものを得なければ! そう思って努力した結果、さとこはさまざまな幸せを手に入れた。