「果報は寝て待て」
ゆっくりと今できることから
「よく、果報は寝て待てって言うでしょ? だから、運が巡ってくる時のために、少しでも元気になっていないとね」
これは、第2話で鈴が言っていた言葉だ。体調が悪い時、「早く元気にならなきゃ!」と言われると、「そんなすぐに治れば苦労しないよ〜!」と焦ってしまう。
でも、“運が巡ってくる時のために”と思うと、未来にちょっぴり希望を抱くことができる。急に元気にならなくてもいい。ゆっくりゆっくり、できることから。
また、最後の最後で、さすらいの旅に出ていた司が、団地に帰ってきてくれたのには、胸が熱くなった。大学生の頃、(おそらく)認知症の祖母の世話をしていた司。
ある夜、祖母が寝巻きのまま徘徊してしまったことがあったらしい。その時、ふと「このまま見つからなければいいのに」と思ってしまったことに、司は今もなお罪悪感を抱いている。「こんな人間に、誰かの面倒を見る資格はないです」と。
しかし、そう思いながらも、必死になって探したからこそ、祖母を見つけることができたのだろう。そこまで気にすることでもないし、本当に薄情な人は、こんなにも罪悪感を抱くことはない。
ただ、さまざまな経験を重ねた結果、司は自分にとっての幸せを見つけたのだと思う。それは、ある程度の自由がありつつも、ちゃんと帰ってくる場所を持つこと。他人に壁を作りがちだった司も、この団地で鈴やさとこに出会い、また誰かを大事にしたいと思えるようになった。
自分を大切にすることができれば、おのずとまわりを大切にすることができる。そうすれば、団地のなかで薬膳の輪が広がっていったように、思いやりの心も広がっていくはずだ。できることから、ゆっくりゆっくりと。今日は、自分のために薬膳スープをコトコトと煮込んでみようかなと思う。
【著者プロフィール:菜本かな】
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。
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