視聴者の思いも代弁した中谷に拍手

『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』第9話©TBS
『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』第9話©TBS

 ただ、感情的な面で言えば、やはり中谷に共感する。白山に一切同情せず、「俺」と「あんた」という彼らしくない言葉を使いながら、理路整然と詰めていく。主婦がいるという前提で世の中は当たり前のように回っていた。そこまで想像が及んでいなかったからこそ、白山はいま現在大変な思いをしているのだと。

 最終的に「子供なんて生まなきゃよかった」と吐いた白山に対し、「子供はあんたのぬいぐるみじゃない!」と中谷は糾弾するが、少しも言いすぎだとは感じない。詩穂はかばうが、心情的には「いいぞ、中谷」と拍手を送りたくなる。

 村上夫婦の仲を取り持ちながら、視聴者の思いも代弁してくれた中谷。第9話のMVPとしてまばゆい輝きを放ち、彼自身も少しずつ成長しているようだ。官僚として自分らしき生きられる世の中を目指すと宣言していたが、いまの彼が政治家になってくれたら支持する人も多いのでは…と夢想してしまう。

 そして、物語はいよいよ最終回。詩穂が家事を押し付けた父・純也(緒形直人)とついに向き合うことになりそうだ。父も時代の“こうあるべき”に囚われていたと考え、許すべきかもと思い始めている。しかし、仮に許さなくともひとつの決断。すべてを水に流すことが前に進むというわけでもない。詩穂がどのような選択をしたとしても尊重したい。

【著者プロフィール:まっつ】

1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。

【関連記事】
【写真】ディーン・フジオカがかっこよすぎる…貴重な未公開写真はこちら。『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』第9話劇中カット一覧
なぜドラマ『対岸の家事』に救われる人が多いのか? 好調の理由を徹底解説&考察。タイトルに込められた意味とは?
『対岸の家事』第8話考察&感想レビュー。「男の嫉妬を甘く見ないほうがいい」ディーン・フジオカの台詞に深く頷いたワケ【ネタバレ】

【了】

1 2 3
error: Content is protected !!