追い詰められていく田沼意次(渡辺謙)
さて、蔦重が上昇傾向にあるのに対し、どんどん追い詰められているように見えるのは田沼意次(渡辺謙)だ。新たに子を儲けることを諦め、御三卿の一つである一橋徳川家の当主・治済(生田斗真)の長男・豊千代を養子として迎え入れることにした家治(眞島秀和)。
その上で自身の養女で、松平定信(もとの名を田安賢丸/寺田心)の妹・種姫を正室に据えようとしていたが、豊千代はすでに島津重豪(田中幸太朗)の姫・茂姫と縁組していた。意次はならば茂姫を側室にと提案するが、2人の縁組は8代将軍・吉宗公最愛のお方と言われた浄岸院の遺言であるという理由で重豪がこれを拒否する。
家治の意向を無視するわけにはいかないが、そもそもは財政の観点から田安家を取り潰そうとしていた意次。かつ重豪は「蘭癖大名」の異名を持ち、オランダをはじめとした西洋の言語や文化に造詣が深いため、かつて源内と開国への夢を語っていた意次としても大事にしたい。
そこで意次は紀州徳川家に種姫を嫁がせ、茂姫を正室にするという条件で正式に豊千代を家治の養子として迎える。さらには豊千代の生母が西の丸に入ることが決まり、知保の方(高梨臨)は追い出され、次期将軍の養母になること叶わず…。
これら全て治済の策略であったが、意次はまんまと嵌ってしまい、田安家サイドの恨みを一身に受けることとなる。時代が変わるーーそんな予感をひしひしと感じさせた回だった。
【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
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