朱羅(松本若菜)とナオミ(小雪)に共通することは?
一方、ナオミは睡眠薬を過剰内服した小松知香(椛島光)を受け持つことに。自殺を望んでいた知香に「なぜ助けたのか」と責め立てられるさまは、朱羅と橋本の状況とどこか重なる。身体の回復は早くても、問題はメンタルケアをどうするか。そっと見守るのもひとつの方法かもしれないが、それだけでは根本的なことは何も解決しない。
ただ、拒否や非難をしていても、それが患者の本心とは限らない。橋本は治療を拒み、妻も彼の意思を尊重していた。でも、救急車を呼び、救急科にきたということは、「生きたい」「生きてほしい」という語られない本音が心のなかにあったように感じる。
知香が薬を飲んだとき、職場の同僚に電話をしたのも、「助けてほしい」という心の叫びだ。同僚が知香の本心を察したように、本当は誰かに手を差し伸べてほしいと心の底では思っていたのだろう。
生きる意味がわからなくなって死に近づこうとしてしまうのは、朱羅が言うように、心に嘘をついて本当にやりたいことをやらないからなのかもしれない。橋本の場合なら、末期がんだろうとも、命が尽きるその直前まで生きがいである医者でいていい。朱羅が誰になんと言われようとも頑なに患者を救命しつづけるのは、それが彼女にとって本当にやりたいことだからなのだろう。
口に出す言葉と本心がバラバラになることは、案外誰にでもあるのかもしれない。橋本の心をも救った朱羅と、知香に「私はあなたに生きてほしい」と伝えたナオミ。二人らしい終幕を、ぜひ見届けてほしい。
ラストで流れた湾岸駅前通り魔事件から28年というニュースは、不穏な空気を運んできた。第8話では、ついに朱羅の過去が明かされるのだろうか──。
【著者プロフィール:西本沙織】
1992年生まれ、広島在住のライター。会社員として働くかたわら、Web媒体でエンタメに関するコラムやレビュー記事の執筆を行っている。ドラマや映画、マンガなどのエンタメが好き。
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