麻生久美子”あやめ”が最高すぎる…拍手喝采の「女たちの復讐」とは? ドラマ『魔物』第6話考察&感想レビュー【ネタバレ】
麻生久美子主演の金曜ナイトドラマ『魔物(마물)』(テレビ朝日系)が放送中。本作は、『梨泰院クラス』のSLLとテレビ朝日による、日韓共同制作によるオリジナル作品で、美しくも上質な禁断のラブサスペンスだ。今回は、第6話のレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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あやめ(麻生久美子)が遂に反撃!
暴力で他者を支配する人間は反撃されないと高を括っている。あやめ(麻生久美子)に殴り返され、狼狽える凍也(塩野瑛久)を見てそう思った。『魔物(마물)』第6話で描かれるのは、ズバリ“女たちの逆襲”だ。
ついに凍也からの暴力を愛として受け入れてしまったあやめ。凍也は「みんな俺に何かを望んでた。でも、あやめは違った。俺自身を望んでくれた」と語り、これまで以上にあやめをやさしく扱い始める。しかし、そのぶん激しさを増すのが執着だ。
夏音(北香那)がいなくなり、彼女を連れ戻そうとした時の動画が拡散されたことで、フェンシングコーチとしての信頼も失った凍也にはもうあやめしかいなかった。あやめが仕事中でも構わず電話をかけ、応じなければ浮気を疑う凍也。
あやめは再び暴力を振るわれることを恐れ、常に凍也の顔色を伺うようになり、徐々に疲弊していく。仕事で成功を収め、誇り高く生きていた華陣あやめの姿はもうどこにも見当たらない。
そんな彼女の変化に気づくのが、弁護士事務所の同僚である今野(大倉孝二)と渚(宮本茉由)だ。ある日、職場で倒れて2人に介抱してもらったあやめ。原因が源凍也にあると気づいた彼らに心配されるが、「大丈夫だから」と突っぱねてしまう。
そこへあやめと連絡がつかず、職場まで迎えにきた凍也が。今野に「相当疲れてるようです。心当たりありますか?」と切り出された凍也は怒り心頭。あやめを連れ帰り、その頬を打つのだった。
「言ったよね?俺にはあやめしか、いないって」
その瞬間、あやめの中で何かが弾ける。あやめは知っていたのだ、凍也が夏音を未だに探し続けていることを。にもかかわらず、自分を支配し、折に閉じ込めようとしてくる凍也の頬をあやめは怒りと悲しみを込めて平手打ち。
さらに再び殴ろうとしてきた凍也を拳で撃退すると、自宅から駆け出した。その足で凍也と出会った場所に向かい、夏音を呼び出す。
凍也(塩野瑛久)が遂に警察に連行…。
第1話のDV講習で「あなたは煮立った鍋の中で既に半分茹でられたカエルです。完全に茹で上がってしまう前にその場所を飛び出して下さい」と語っていたあやめ。誰にも寄りかかることなく自立していた彼女は、どこかで暴力から逃れられない女性たちを弱い人間だと見下していたのだ。
だが、強いも弱いも関係ない。誰であろうと愛する人に暴力を振るわれた人間は怒るよりもまず困惑し、やがてはその行為を愛情の裏返しとして受け入れるようになる。それはある種の防衛本能なのだろう。愛している人に愛されていないという事実を直視しないための。
「この愛から振り落とされないように、必死にしがみついていたのは彼じゃない。私だった」と気づくことができたあやめは夏音を説得し、これまで凍也から受けてきた暴力の被害届を提出させる。そして後日、あやめとの待ち合わせ場所に現れた凍也は警察に取り囲まれ、激しく抵抗しながら連行されていった。
一方、陽子(神野三鈴)はすでに夫・名田奥太郎(佐野史郎)に復讐を遂げていたことが分かる。取材で出会った奥太郎に強く惹かれ、もともと交際していた相手から彼を奪った陽子。ところが、奥太郎は仕事で成功する陽子に敗北感から強くあたり、暴力こそ振るわないものの、彼女をひとかけらも愛そうとしなかった。
凍也と夏音(北香那)を特別な絆で結びつける“秘密”とは
そしてついに離婚を切り出したのが、奥太郎が死亡したあの夜。陽子に三行半を突きつけた後、自縛プレイに及んだ奥太郎は窒息しかける。陽子が異変に気づき、駆けつけた時、まだ奥太郎には息があった。
しかし、助けようとした陽子の手が、奥太郎の口から「さゆり」という名前が出た瞬間に止まる。おそらくそれは、奥太郎の元恋人。また、きっと夏音のように一見か弱く、男性が守ってあげたくなるような女性だったのではないだろうか。
そんな女性から奥太郎を奪い、仕事も男も手に入れたつもりだった陽子。だが結局、奥太郎が心の底から求めているのは自分ではなかった。
プライドを大きく傷つけられた陽子は奥太郎を見殺しに。誰かに殺されたように見せかけ、その罪を凍也に擦りつけたのだ。その一部始終を目撃していた潤(落合モトキ)は陽子を庇い、嘘の供述をしていた。
その一方で、凍也に対して男性としての魅力を感じていた陽子。凍也への辛辣な態度は、決して手に入らないからこそのものなのだろう。そんな陽子は凍也と夏音の重大な秘密を握っている。
家で匿っている夏音を探しにきた凍也は、陽子に「あの事故のこと、忘れてください」と話していた。そこにインサートされるのは、礫死体を前に怯える高校生の夏音に凍也が手を差し伸べる回想シーン。
凍也と夏音を特別な絆で結びつける“秘密”とは一体何なのか。そしてその“秘密”がきっかけとなり、あやめは釈放された凍也から執拗な復讐を受けることに。すべてが終わったと思っていたあやめだが、ここからが始まり。次週の第7話から、ついに本作は最終章に突入する。
【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
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