パズルのピースが少しずつハマっていく…怪しい動きを見せているのは？『あなたを奪ったその日から』第7話考察＆感想。【ネタバレ】

2025/06/05

text by 西本沙織

北川景子主演のドラマ『あなたを奪ったその日から』（カンテレ・フジテレビ系）が現在放送中だ。本作は、食品事故で子どもを失った母親が、事故を起こした男の娘を誘拐するサスペンスドラマ。復讐と親子愛の壮大なストーリーだ。今回は、第7話のレビューをお届けする。（文・西本沙織）【あらすじキャスト解説考察評価レビュー】

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見えてしまった真実

　紘海（北川景子）が旭（大森南朋）のもとで働いていることが、砂羽（仁村紗和）に気づかれてしまった。このまま砂羽が紘海の罪までスムーズに辿り着くのかと思いきや、『あなたを奪ったその日から』第7話は、思わぬ展開をみせる。

　旭の悲願だった「スイッチバック」の関西進出の話が進み、クライアントである関西中央地所の藤田正臣（大門正明）家族を招くホームパーティを行うことになった旭。そこへ梨々子（平祐奈）も手伝いにくると聞いた紘海は、「自分も行ってみたい」と望月（筒井道隆）に伝え、パーティ潜入を試みる。

　玖村（阿部亮平）が目撃したという旭と元調理責任者・鷲尾（水澤紳吾）の口論の場には、梨々子もいた。彼女がなにか聞いているかもしれない──。真相に近づくチャンスだと考えていた紘海だったが、そこで知ってしまったのは結城家が「バラバラの家族」であること。

ほんの一瞬が、永遠を奪う

　梨々子が紘海に放った「うちの料理を口にするなら気をつけてくださいね、結城家は食べ物で人を殺したことがあるので」という言葉。事件について梨々子がなにか握っているともとれるが、なにより父である旭への軽蔑の感情がひしひしと伝わってくる。

　そんな折、藤田の孫・比呂（市野叶）がぶどうを喉につまらせる事故が起きてしまう。喉を押さえながら悶える比呂と、アナフィキラシーで苦しむ灯（石原朱馬）の姿がオーバーラップしてしまった紘海は、必死になって助けようとする。

　命に別状はなかったものの、子どもから目を離した藤田や母親である美織（岡本玲）への怒りが抑えられない紘海。しかし、子どもが苦しむ姿を目の当たりにしていない藤田たちには、ことの重大さが伝わっていない。

「ちょっとの油断で、一生悔やむことだってあるんです。ある日突然、大事なものを失ってしまうことだってあるんです。後悔しても遅いんです」と、紘海がひたむきに訴えるさまは、胸に迫るものがあった。突如として大切なものを失くしてしまう悲しみを、紘海は痛感している。けれど、それは藤田たちには想像しづらかったようで…。紘海の言葉が、彼らになかなか理解されなかったのが切ない。

被害者であり、加害者でもある

　藤田の機嫌を損ねた紘海は懲戒処分を命じられるものの、旭の意見により撤回に。「ちょっとの油断で一生悔やむことがある」この紘海の言葉が最も響いていたのは、旭だった。旭には忘れられない一日があり、それは萌子がいなくなった日だ。自分が萌子から目を離してしまったことを昨日のことのように思い出し、悔やんでいる。

「夕陽をみるたび、あの日と同じ痛みにえぐられます。勘違いかもしれませんが、なんだかあなたが僕と同じ痛みを抱えているような気がして」

　旭の痛みは、紘海が萌子を誘拐したことによるもの。そして、紘海の痛みは、旭の会社が引き起こした事故によって娘を亡くしたことによるもの。被害者であり、加害者でもある。その複雑な関係がより浮き彫りになったシーンだが、旭の心痛と後悔を知ってしまった紘海は、これまで以上に罪悪感に満ちた表情をしていた。

　紘海のなかで旭の印象が大きく変化を見せているものの、旭が食品事故に関する鷲尾との誓約書を見つめる意味深な場面もあり、彼の疑念はぬぐい切れない。また、望月から紘海への予想外の恋の矢印が発覚したが、紘海が平良木線キーホルダーを所持していることを知ってなにかに気づいたようす。

繋がっていく違和感

　さかのぼること第3話。結城家の前で自転車を倒した不審な女（紘海）が、リュックにキーホルダーをぶら下げていた。それが、紘海が持つものと同じであるとふと思い出したのかもしれない。だが、紘海と不審な女がイコールで結びついても、萌子を誘拐したとまで結びつくとは限らない。もしそこまで辿り着いても、望月は紘海に特別な感情を抱いているようだから、紘海に力添えする可能性もある。

　一方、食品事故の真実を明らかにしたい砂羽は、同じく隠蔽を探る紘海に協力を仰ぐ。美海（一色香澄）のことは、灯の後に生まれた実子だと思っているようだ。思いがけなく共同戦線を張ることになりそうな二人だが、紘海にとっては秘密を知られるリスクもあるだろう。

　そして、美海は紘海の隠し事に気づきつつあった。おそらく、紘海が大事そうに眺めていた灯の写真と赤いリボン、臍の緒が入った木箱を見てしまったからだ。散り散りになっていたパズルのピースが、だんだんとはまり始めてしまった。第8話では、どんな葛藤が紘海を待ち受けているのだろうか。