あまりにつらすぎる…死にリアリティをもたらす濱田岳の演技力に唸ったワケ。『PJ ~航空救難団~』第7話考察&感想レビュー【ネタバレ】
内野聖陽主演のドラマ『PJ ~航空救難団~』(テレビ朝日系)が、放送中だ。本作は、航空自衛隊航空救難団に所属する救難員、通称PJ(パラレスキュージャンパー)を育てる救難教育隊を舞台に、教官と訓練生の心震える群像劇。今回は第7話のレビューをお届けする。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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学生たちに突き付けられた残酷な現実
つらい。あまりにつらすぎる。
木曜ドラマ『PJ ~航空救難団~』第7話では、救難教育隊の教官の一人であった仁科(濱田岳)が斜面崩落に巻き込まれ、死亡が確認された。
自然はいつだって理不尽だ。PJを目指す学生たちを通して彼らがいかに厳しい訓練を積んでいるのは周知の通りだが、それでも救難活動中に命を落としてしまうことはあるという残酷な現実が突きつけられた。
仁科は大規模災害の現場でかすかな子供の声を聞いていた。建物が崩れる予兆を感じながらも、見殺しにすることなく建物内に入って見事救助に成功する。しかし、救助したことで自身を引き上げる時間がなくなり、一人現場に残されて土砂に飲み込まれることとなった。
果たして仁科の判断は正しかったのか。主任教官の宇佐美誠司(内野聖陽)は学生たちの前で検証を行うが、実際に仁科の是非を問いたいわけではない。彼らに求めているのは「考えること」それ自体だ。
一人前のPJになるために必要なこと
生きていれば理不尽なことはたくさんある。人の命を救うことと向き合っている彼らならなおさらだろう。悲しく、やりきれない気持ちになることは常人の比ではないはずだ。しかし、それでも生活は続くし、命を救い続けなければならない。彼らに必要なのはただ悲しみ悼むことでも、立ち止まることでもなく、考え続けることなのだ。
あのとき10秒早く靴が履けていたら、あと10秒早く出発していたら……。一般的に「たられば」はしても意味のないこととして挙げられるが、こと救助の現場ではそうではない。終わったことはしょうがないではなく、日々考え続けることでのみ一人前のPJとなっていくのだろう。
ドラマにおいて一人の登場人物の死は悲劇に他ならないのだが、単に悲しく涙を頂戴するだけの出来事とはなっていない。学生たちはつらい現実と向き合い、歯を食いしばりながら乗り越えようとしていく。その過程が美しく、ヘリコプターからの降下訓練は感動的なシーンに映る。悩み考えながらも前に進んでいるということを表し、一人ひとりが立派に地に降り立つ姿を見ているだけで思わず鳥肌が立ってしまう。
仁科は教育に携わることについて「片思いで上等ですよ」と言っていた。しかし、思いはたしかに届いていた。彼の死は救助者の親子2名を救っていただけではなく、綺麗ごとではなく学生たちの今後を救っていくことになるはずだ。
仁科役を演じる濱田岳の演技力の凄さ
それにしても、死にリアリティと説得力をもたらす濱田岳の演技力にはまさにあっぱれだった。過去には『太陽と海の教室』や『コード・ブルー』などのドラマ内でも亡くなった役を演じた経験があるが、死の間際を演じさせたら彼の右に出る役者はいないのではないか。
救助者の子供を勇気づける姿も、背中で土砂を感じ震えが止まらない姿も、立派な救難員であり人間だった。最後まで責務を全うしようとする動きがあらゆるところから伝わり、涙を堪えるのは難しい。
私たち視聴者も彼の死は心にしっかりと刻み込まれたが、宇佐美にとっても同様だ。元々はパイロットであった仁科は宇佐美に憧れ、救難員を志した。宇佐美の言う「救う」を誰よりも理解していた仁科が亡くなったからこそ、上空での慟哭に結びつくのだろう。
苦難も悲劇も、そして仲間との別れも彼らは乗り越えていかなければならない。藤木さやか(石井杏奈)が救難員過程を辞退していたが、さらに長谷部達也(渡辺碧斗)も自身の能力を鑑みてPJへの道を諦めるのだった。
しかし、残された者たちがどうなってしまうのかという心配はもはやない。彼らはこの訓練の最中で成長を続け、一歩ずつ前へと進んできた。困難すら力に変えていき、一人前のPJとなることに疑いはない。
だが、幼少期に宇佐美に救われた経験のある沢井仁(神尾楓珠)がその事実を知らされ、なぜか複雑な表情を浮かべている。それが意味しているものとは――。
【著者プロフィール:まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。
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