かっこよすぎる…『続・続・最後から二番目の恋』が描くシニア世代に「負けたくない」と思うワケ。第9話考察&感想【ネタバレ】
小泉今日子&中井貴一がW主演のドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)が現在放送中。古都・鎌倉が舞台のロマンチック&ホームコメディ。前作から11年を経て、相変わらずの二人の距離感で流れゆく人生を見つめる。今回は、第9話のレビューをお届け。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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63歳にして初めて得た自分の未来を選択する自由
『続・続・最後から二番目の恋』第9話は、長倉家の長男・和平(中井貴一)と、次女の万理子(内田有紀)が大きな一歩を踏み出した回だった。まず、鎌倉市長の良子(柴田理恵)に、「市長選に立候補して後継者になってくれませんか?」と言われていた和平。
ちょうど就職活動の時期に両親を亡くした彼は、自分の未来を自分の手で選択したことがなかったらしい。鎌倉市役所に就職したのも、安定した仕事に就けば、妹や弟たちを生活に困らせることがないだろう…と思ったから。そんな和平は、63歳にして初めて自分の未来を選択する自由を手に入れたのだ。
ちょっぴり目立ちたがり屋な部分もある和平のことだから、てっきり鎌倉市長に立候補するものだと思っていた。『最後から二番目の恋』シリーズのファンとしては、「和平が鎌倉市長になったら、シーズン4も盛り上がるな」なんていう邪心もあったりして…。
しかし、和平が選んだのは“現状維持”だった。妹弟、そして娘の娘えりな(白本彩奈)とわちゃわちゃしながら暮らし、隣に千明(小泉今日子)がいるこの生活を変えたくない。というか、「これが、俺の夢なんだな」と思ったようだ。12年もの間、千明と付かず離れずの関係を続けている和平らしい選択だ。
“自分のために”描きたいという潜在意識
その一方で、“現状打破”を選択したのが、妹の万理子だ。千明に恋心を寄せる彼女は、“千明の仕事上の恋人になる”ということだけを励みに、脚本を書き続けてきた。
そのため、万理子は千明がプロデュースする作品でしか脚本家として機能できなかったし、“千明のために”という気持ちがとにかく強かった。しかし第4話あたりから、“自分のために”描きたいという潜在意識が、むくむくと成長してきたのだった。
そんな万理子に、「わたしという親から親離れしようとしているのかもしれない」「成長っていうのはさ、したくてするもんじゃないの。勝手にしちゃうものなのよ。生きてれば。だから止められないの」と声をかけた千明。
ただ、万理子は「成長して千明さんから離れるくらいなら、嫌です! やっと、生きる理由を見つけたのに!」と断固拒否していた。しかし、ドラマチームの仲間たちからの声かけもあって、ようやく親離れの時を迎えることができたのだ。
万理子が考えた月9ドラマ『全てが君に微笑む』のプロット案も、無事に完成! このドラマは、万理子自身のことを綴った物語だ。
企画書に書いてあった「恋をした。絶対に叶わないと決まっている一方通行の恋。それでも、わたしはやっぱり彼女を想い続けたい。彼女に出会って、恋をして。わたしは初めて、わたしのことを好きになれた」という文章だけで、名作フラグが立ちまくっている。このドラマ、本当に映像化してほしい…!
人生の選択を自分で行えますように
「変化を求めるのであれ、今を守ろうとするのであれ、大事なのはそれが自分の選択であることなんだ。どうか、この世界に生きるすべての人が、人生の選択を自分で行えますように」
千明のモノローグのとおりに、長倉家のメンバーたちは人生の選択を自分で行なっている。その選択の行き着く先が、現状維持でも現状打破でも、どちらでもいい。
ただ大事なのは、それが自分の選択であること。自分で納得して進んだ道ならば、どんな困難が待っていたとしても、強く進んでいくことができるはずだから。
個人的には、和平に「もう一期、市長を続けてはいかがですか?」と言われた良子が「それはできません。記憶力が怪しくなってきたんです。これ以上、責任あるこの職を続けてはいけない。そう自分で決めました」と返していたのが、印象に残った。
今はまだ怪しくなってきた段階だから、自分で引き際を決めることができる。でも、これ以上続けたら、「もう辞めた方がいいのでは?」と言われる日が来てしまうかもしれない。そう考えたら、自分で自分にストップをかけられるのも、ひとつの幸せの形なのかもしれないな…なんて思った。
『続・続・最後から二番目の恋』が若い世代からも支持されている理由
シニア世代が多い『続・続・最後から二番目の恋』の主要キャラのなかで、若者代表枠を担っているのが、和平の娘のえりなと、その恋人(?)の優斗(西垣匠)だ。現在28歳のわたしも、世代的にはこの2人に近い。
そのため、「かっこいいでしょ? うちのお父さん(えりな)」「負けたくないなぁ。大人たちに(優斗)」という2人のやり取りを聞きながら、「分かるっっっ!」と大共感した。
本作には、とにかくかっこいい大人たちがたくさん登場する。そのため、年齢を重ねることを前向きに捉えることができるのだ。
「こんなふうになれるのなら、若さを失うのも悪いことではないな…」と。また、シニア世代になっても、夢を追いかけてキラキラしている千明や和平を見ていると、「負けていられないな」と鼓舞されたりもする。本作が、若い世代からも支持されている理由は、ここにあるのかもしれない。
【著者プロフィール:菜本かな】
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。
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