福原遥がハマり役…”花魁・誰袖”に待ち受ける未来とは? 今後の展開を徹底予想。大河『べらぼう』 第22話考察&感想【ネタバレ】
横浜流星主演の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)が現在放送中。貸本屋からはじまり「江戸のメディア王」にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く。今回は、第22話の物語を振り返るレビューをお届けする。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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花魁・誰袖(福原遥)のしたたかさ
瀬川(小芝風花)と入れ替わるように登場し、吉原を代表する花魁となった誰袖(福原遥)。『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第22話は、そんな彼女が歴史を大きく動かしていく予感を漂わせた。
「主さんを一目お見かけしすぐに分かりんした。主さんは仏様がわっちのためにお遣わしになったお方と」
幼い頃から蔦重(横浜流星)一筋だった誰袖が心を奪われた相手は、“花雲助”という偽名で吉原に潜入した田沼意知(宮沢氷魚)だった。蝦夷地を上知する正当な理由として、松前家とロシアの抜荷(密貿易)の証拠を掴むため、誰袖の馴染み客である旗本の土山宗次郎(栁俊太郎)に接近した意知。
2人の会話を聞いていた誰袖は身請けを条件に、間者を申し出る。しかし、意知にその木がないと分かるや否や、「わっちは松前に関わるお方に、あの日聞いたことをお知らせすることもできるのでありんすよ」と脅しにかかるのだ。
さすがは今際の大文字屋(伊藤淳史)に、蔦重に自分の身請けを許す旨の遺言書を書かせた女。欲しいものを手に入れるためならば、手段は選ばない。
そんな中、松前道廣(えなりかずき)の弟で、松前藩の江戸家老・廣年(ひょうろく)が来客。誰袖はその席につき、廣年がつけていた珍しい石の数珠を抜荷の証拠として意知に提出するのだった。
天真爛漫な笑顔の裏にしたたかさを隠した誰袖役がハマっている福原。昨年、ドラマ『マル秘の密子さん』(日本テレビ系、2024)でキャリア史上初となるダークヒロインを演じた経験が活きている。
意知(宮沢氷魚)に待ち受ける運命は?
誰袖は廣年が「俺が使える金はさしてなくてなぁ」と何気なく漏らした言葉も聞き逃さなかった。そのため、数珠が証拠にならないことを知ると、意知に「ではこの際、弟君に蝦夷を通さぬ抜荷とやらをやらせてみれば?」と提案。自由に遊べる金を欲している廣年に儲かる抜け荷商いを持ちかければ、乗ってくるはずだと考えたのだ。
“証拠がなければ、作ればいい”スタンス。これには意知も「その手があったか」というような顔をし、「見事、抜荷の証を立てられた暁には、そなたを落籍いたそう」と約束する。
だが、約束はおそらく果たされない。史実では、天明4年に誰袖は土山に1200両で落籍されている。さらには同年、意知は佐野政言(矢本悠馬)によって殺害されているのだ。動機は田沼家が佐野家の家系図を借りて返さなかったこと、佐野が出世のために多額の賄賂を贈ったが見返りがなかったことなどによる私怨とされた。
しかし、田沼政治の反対派に利用されたとする説もあり、脚本家の森下佳子はここに蝦夷地の一件を絡めてくるのではないだろうか。今後の流れを予想すると、意知が誰袖の働きにより抜荷の証を掴む。
しかし、道廣と親しい間柄にあり、さらには田沼を失脚させて権力を独り占めしたいと考えている一橋治済(生田斗真)が意知の暗殺を指示。意知は殺され、誰袖は失意の中、土山に身請けされる…という流れになりそうな予感だ。
蔦重(横浜流星)は意外と鈍感?
誰袖が意知から身請けの約束を取り付けた頃、蔦重は北尾政演(古川雄大)への嫉妬から酒の席で大暴れした恋川春町(岡山天音)をフォローしていた。しかし、春町の頑なに筆を取ろうとせず、「いちいち考え過ぎ」と歌麿(染谷将太)に愚痴をこぼす。
瀬川(小芝風花)から寄せられている恋心に長年気づかなかったことを鑑みても、蔦重は少し他人の心の機微に鈍感なのかもしれない。だが、そんな弱点を補ってくれる仲間が蔦重にはいる。
蔦重の代わりに歌麿と喜三二(尾美としのり)が春町の心情に寄り添い、大田南畝(桐山健太)が春町の皮肉屋としての才を見出す。その結果、春町は新たな作風を手に再スタートを切った。政演とも無事に仲直りし、忘年会で今度は楽しく大暴れする春町。
身分や立場、年齢を超えて、人々が“本”を通じて繋がり合っている。その光景を目に涙を溜めて眺めながら、「お前さんは、これから板元として、書をもって世を耕し、この日の本をもっともっと豊かな国にするんだよ」という平賀源内(安田顕)の言葉を噛みしめる蔦重の姿が感動的だった。
だが、それは俄の祭りのように一炊の夢に終わる幸せなひと時なのかもしれない。意知の死をきっかけに、民衆の田沼政権に対する不満が噴出。そして2年後、徳川家治(眞島秀和)が亡くなり、後ろ盾を失った意次は老中を罷免される。代わりに老中の座に就くのが、松平定信(寺田心)だ。定信が断行した寛政の改革により、蔦重たちは大きな打撃を受けることとなる。
ラストでは、意知が蔦重に蝦夷地開拓の計画を明かし、「そなたもひとつ、仲間に加わらぬか」と誘う姿も描かれた。誰袖に愛された蔦重と意知。その傘にしんしんと降り積もる雪がこれから2人に訪れる苦難を表しているように見える。誰袖の恋が一つの時代に終焉をもたらそうとしていた。
【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
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