実は上司に向いている?…松田元太“人見”のスゴさを再認識したワケ。『人事の人見』第10話考察&感想レビュー【ネタバレ】
松田元太(Travis Japan)が単独初主演を務める火9ドラマ『人事の人見』(フジテレビ系)が、現在放送中。本作は“人事部”に焦点を当てた、痛快オフィスエンターテイメント。さっそく、第10話のレビューをお届けする。(文・ふくだりょうこ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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遂にやってきた社長との対峙の時
いよいよ社長との対峙である。
地元商工会の講演で「我々の時代はサービス残業も休日返上も当たり前だった!」と発言した小笠原社長(小野武彦)。これが動画に撮られ、SNSに拡散されてしまう。当然、大炎上する。
小笠原自身は世の中が、社会が変わってしまったと思っているので、あまり悪びれた様子はない。ただ、意地を張っているようにも、強がっているようにも見える。
屋上の物思いにふけっていた小笠原だが、知らぬ間に出入り口に鍵がかけられてしまい、締め出される事態に。偶然、屋上で休んでいた人見(松田元太)と時間を過ごすことになる。
人見と話をする中で、「正体を隠してこっそりみんなの本音を聞く」というアイディアを思いついた小笠原。自分と同じ考えの社員を見つけだそうとするが、聞こえてくる声は社長に対する反発ばかりだった。
人たらしとも言える人見。ちゃっかり小笠原と打ち解ける。いつの間にか小笠原の家に招かれるほどの関係に。
里井(小日向文世)へのクビ宣告に人事部が奔走
時代遅れで傲慢で権力を振りかざす……という小笠原を想像していたが、彼を慕う人の話を聞いていると意外な一面が見えてくる。自分の大切な人や縁がある人が困っていれば救いの手を差し伸べている。愛情に厚いし、人の苦しみも分かる。ただ、それは自分を理解し、支持してくれる人に限るのかもしれない。だから彼の周りにはイエスマンしかいない。
ノーを突き付ける里井(小日向文世)とは対立気味だ。講演での発言について社員に説明を、と言うが小笠原は受け入れない。さらに言い募る里井に対してクビを言い渡す始末。
人事部は里井のクビを撤回してもらうためにあれこれと作戦を立て始める。人見に感化されてから、だんだんやることが大胆になってきているようだ。一方、人見も里井のクビには納得できないが、小笠原の人柄にも触れて人事部の作戦には賛成できずにいた。
いろんな事案があったが、『人事の人見』で共通されているのが完全な善も悪もないという、当たり前だけれどなかなか描きづらいもの。悪だと思っていたら実は誤解していただけ、ということもあるし、正しいと思っていたことにも角度を変えれば悪だったりする。
今回の小笠原だってそうだ。傲慢で時代遅れな人というだけだったら、いっそ楽だっただろう。見方を変えれば、小笠原は誰かの恩人でもあった。数は少ないだろうが、社員の中にも心から慕う人間はいるはずだ。ただ、人間は自分が見たものしか信用できない。日の出鉛筆の社員の大半は小笠原の「正しい部分」を見ることができない。そして一旦偏った見方をするとなかなか矯正できない。
だが、人見は違った。彼のすごいところは常にフラットだということ。全てを平等に見つめる。だから問題点も見えるし、良いところも見える。……実は上司に向いているタイプでは? 仕事に対しての能力はいまだに謎だが……。
いよいよ最終話、気になるポイントは?
そして、里井。小日向文世が演じているのに里井が只者であるはずがない。里井はどうにかして日の出鉛筆を変えようとしていた。小笠原は里井に向かって「俺が嫌ならお前が辞めればいい」と言ったが、たいていの場合はそうだろう。それでも里井が辞めないのは、小笠原とは形は違っても、愛があるから。
しかし、日の出鉛筆を変える=小笠原社長を変えるということ。とてもじゃないけれど無理なことのように思えたが、その鍵となるのが人見だったのだ。
現代の考え方を少なからず受け入れた小笠原は、社員に対して謝罪。そして辞任を発表する。最後の仕事として、次の社長に指名したのはなんと人見!
確かに、上司に向いているかもしれない、という気はするが、いきなり大企業の社長が務まるとは思えない。新しいことを吸収する力はありそうだけれど、誰か手綱を握る人がいてうまくいきそうな。里井が握るのか? それとも……。
次週、最終回。社長・人見はどんな姿を見せてくれるのだろうか。
【著者プロフィール:ふくだりょうこ】
大阪生まれ関東育ちのライター。
大学卒業後からライターとして活動、シナリオ制作やエンタメジャンルの記事を中心に執筆。
ドラマと邦画、ハイボールと小説が好き。
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