前田敦子“真野”との関係は？松田元太“人見”に自然と人が集まるワケ。『人事の人見』最終話考察&感想レビュー【ネタバレ】

2025/06/23

text by ふくだりょうこ

松田元太（Travis Japan）が単独初主演を務める火9ドラマ『人事の人見』（フジテレビ系）が、最終回を迎えた。本作は“人事部”に焦点を当てた、痛快オフィスエンターテイメント。さっそく、最終話のレビューをお届けする。（文・ふくだりょうこ）【あらすじキャスト解説考察評価レビュー】

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いよいよ「日の出鉛筆」社長としての仕事がスタート

「日の出鉛筆」の社長として業務をスタートさせた人見（松田元太）。小笠原社長とどういったやりとりがあって社長になったのかが気になるところだが、秘書に支えられつつも、日々の業務に取り組んでいく。

　しかし、どう考えても社長向きではない。デスクに向かって書類にひたすらハンコを捺す（むしろこれまでハンコを持っていたのだろうか、と思ってしまったほど）、新入社員に気を遣われながら質問を受ける、受けなければならない取材の数々……。社長としての責任があるかどうか、という話は置いておいて、なんというか、似合わない。スーツは似合うが、やっていることが人見っぽくなくて違和感がある。

　そもそも、これは人見がやりたいことなのだろうか。ひとりひとりと向き合って話をしたい人見。しかし、社長としては全体を見なければならない。でも、これは前時代的というわけではない。小さな会社ならともかく、「日の出鉛筆」ほどの規模になるとそれは至極当然のことで、だからこそ多くの部署があるのだ。

　社長の業務について文句があるわけではないだろう。人見は自分のすべきことではない、と気づいたのだろう。そうなると人見の判断は早い。「日の出鉛筆」の社長にふさわしい人を選挙で決めようと言い出したのだ。我こそは！　と思う人、周りから推薦されてた人……。社長になりたい人は多いのだな、と思う。立候補者の数は少なくない。その中には周りに推された平田（鈴木保奈美）や里井（小日向文世）の姿も。果たして選挙の行方は……。

茅原葵（杏花）の言動に違和感を抱いたワケ

　そして選挙の立会演説当日。人事部主導で会を取り仕切っていくが、挨拶をしなければならない人見の姿がない。人見は泣いている新入社員・茅原葵（杏花）を見かけ、彼女を励ますべく行動を共にしていたのだ。

　この茅原がすごい。自己肯定感が低すぎて、「私なんか…」が止まらない。「ジココウテイカン？なにそれ？」みたいなタイプの人見があの手この手を尽くしても「やっぱり私なんて…」という結論に達してしまい、人見も思わず「え、そうなっちゃう？」と言ってしまうほど。

　それでも、人見は投げ出さず、じっくりと話し合う。さすが「人を見ると書いて『人見』です」と自己紹介するだけのことはある。イライラする様子もなく、茅原と対話していく。

　そう、観ている側としてはちょっと茅原にイラッとしてしまったのだ。好きな仕事に就けたのに、企画もまともに出すことができない、と落ち込んでいた茅原。そんな茅原の何気ない一言から、人見は企画を膨らませようといろんな部署の人たちに話を聞き、企画をブラッシュアップしていった。それも短時間で（ここで登場したのが人見と人事部の面々が救ってきた社員たち、というのが最終回感があっていい）。

　全員が企画に興味を持ってくれたにも関わらず、茅原は「誰でも思いつく」「私より別の人が担当したほうがいいものができる」と言う始末。いろんな人の意見を取り入れて、より良いものにして、1人ではできないことを実現していくのが会社の良いところ、という話だと思う。

　だが、それ以上に自己肯定感の低さが与える周りの影響についても考えずにはいられなかった。「私なんて」ということは謙遜でも美しいわけでもない。誰かの優しさを無碍にしてしまいかねないのかもしれない、とある意味、「自称・自己肯定感が低い人たち」への戒めのようにも感じてしまった。

人見（松田元太）と真野（前田敦子）の関係は？

　無事に次の社長も決まり（なんと、意外にも平田が新社長に！）、人見は日の出鉛筆をあとにすることに。次に彼を待っている人たち、場所がいるのだ。

　人事部に見送られる人見だが、遅れて1人やってきたのは真野（前田敦子）。人見にガバッと抱き着き、「寂しい」と心中を吐露する。
真野の人見への感情は一体どういった種類のものだったのだろうか。後輩？　弟？　それとも……。少なくとも、人見はこわばっていた真野の心をほぐし、前を向かせた。それだけをとって見ても、人見は真野にとって大切な人だろう。

　人見は真野のことを特別だと思っているのだろうか。きっと彼は真野が好きだろう。それと同じように、人事部のメンバー全員のことも好きなはずだ。そう、彼は人が好き。だから自然と人も集まってくる。

　人を驚かせつつ、ハラハラさせつつも、愛される。人をまぁるくする。それが人見廉という「人」なのだ。