「終活」がテーマなのに、まさかのコメディ? ドラマ 『ひとりでしにたい』初回から刺さりまくったワケ。第1話考察レビュー【ネタバレ】
綾瀬はるか主演のNHKドラマ『ひとりでしにたい』(毎週土曜よる10時放送)。本作は、愛猫と暮らす独身女性の主人公・鳴海が、幼少期より憧れの存在だった独身の叔母の孤独死をきっかけに、自身の終活について考える物語。今回は、第1話のレビューをお届けする。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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ギャグテイストな終活ドラマ
6月21日から放送スタートした『ひとりでしにたい』。タイトルを見た時は、重めのテイストのドラマなのかと思っていたが、まさかのギャグテイストで驚いた。
NHKは、『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(2023)や、『一橋桐子の犯罪日記』(2022)など、社会問題を取り上げたドラマにコメディ要素を織り交ぜるのが上手い。
『ひとりでしにたい』も、孤独死・介護・終活とわりと暗めの題材をテーマにした物語であるにも関わらず、見終えたあとにズーンとした気分にならない。むしろ、「よっしゃ、前向きに生きるか!」という気持ちにさせてくれるから不思議だ。
本作の主人公・鳴海(綾瀬はるか)は、未婚&子なしの学芸員。つい最近、マンションを購入して、保護猫とともに悠々自適なひとり暮らしを謳歌していた。
しかし、憧れていたキャリアウーマンの伯母・光子(山口紗弥加)が、まさかの孤独死。しかも、浴槽内(それも、お湯をずっと保温しておくタイプのやつ)で亡くなっていたため、「遺体っていうより、あれはもう汁」な状況に…。
鳴海の父・和夫(國村隼)が、「やっぱり、女ひとりの老後ってのは、みじめだな」「結婚もせず、子どもも産まず、ひとりでずっと好き勝手してきたから、最後にバチが当たったってことか」と姉の光子を“可哀想な人”扱いしまくるので、追い詰められた鳴海は「ひとりで死にたくない!」「婚活をする!」と言い出した。
鳴海(綾瀬はるか)のセリフが刺さりまくる
たしかに、鳴海のようにマイナス要素を払拭するために結婚を選ぶ人もいる。実際に、わたしのまわりに「ずっと死ぬのが怖かったけど、結婚してから、ひとりで死ななくていいんだという安心感が生まれた」と言っていた人もいた。
ただ、SNS上でも言われていたように、結婚をしたからといって、孤独死をする可能性がゼロになるわけじゃない。パートナーに先立たれる確率は2分の1だし、子どもを産んでも必ず介護をしてもらえるか? というと確信は持てない。でも、結婚や出産をすることで、未来への不安が少しでも払拭できるなら、それはそれでいいんじゃないかと思う。
しかし、鳴海の場合は、孤独や不安が強すぎて、頭がバカになってしまっている。そんな時に結婚を決めたとしても、いい方向にいくわけがない。だからこそ、鳴海が「ひとりで死にたくないんじゃない。ひとりで生きて、ひとりできちんと死にたいんだ」と気づくことができて、本当に良かった。
今の生き方を否定するのではなく、今の人生をいかに楽しむか。そんな風に思えている“今”だったら、いい人に出会える可能性も上がる気がする。それにしても、「自由と思っていたものは、年を取ると孤独と不安に変わってしまうんだ」という鳴海の台詞、ブッ刺さりすぎた。
キャラ強な那須田(佐野勇斗)
続いて、得体の知れない人物・那須田(佐野勇斗)についても振り返っていきたいと思う。まず、那須田が言うことはめちゃくちゃ厳しい。でも、あまりにも的確すぎるので言い返すことができない。もしも、職場にいたら“マジレッサー野郎”とあだ名をつけてやりたいくらいだ。
「山口さん、婚活始めたって本当ですか? どんな心境の変化があったのかなと思って」と聞かれた鳴海が、「将来の安心のために結婚しておいた方がいいのかなって」と返すと、「令和になって、もう7年って知ってます? 結婚すれば安心って、昭和の発想ですよね? まあ、平成しか知らないから、分かんないんですけど。そもそも、山口さんのスペックで、無料婚活アプリとか登録しても男来なくないですか? 30代の男は20代にしかいかないし、40代の男も平気で20代狙いますからね(以下、省略)」とツラツラ論破(佐野さん、台詞覚えるのかなり大変だったと思います…)。
でも、言い得て妙だから、仕方がない。子どもが老後の面倒を見てくれるなんていうのは、もはや都市伝説なのかもしれないし、そもそも子どもが無事に自立するかどうかなんて分からない。「いや、そんなこと言ってたら、何もできんやん!」とツッコミを入れたくなるが、那須田はきっと100倍にして言い返してくるのでやめておきます。
しかも、そんな那須田、孤独死にめちゃくちゃ興味があるらしい。鳴海が、身内が孤独死したと言った瞬間、目の色を輝かせて、「どんな風に亡くなったんですか?」「年齢は?」「男性ですか? 女性ですか?」「死後、どれくらいでしたか?」と質問祭り。
この程度なら、「ちょっと変わった人だな」くらいで受け入れられるけれど、「遺体写真は、持ち歩いてないんですか?」と当たり前のように聞いてきたのはやばすぎる。確実に、関わってはいけないタイプの男だ。
しかし、鳴海がアイドルオタクなことを知って、美容院でなぜか「アイドルっぽくしてください」とオーダーしていた那須田。これって、鳴海のことが好きってこと〜!? なんだか、面白い展開になってきた。
【著者プロフィール:菜本かな】
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。
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