内野聖陽「あっぱれだ!」が響く…ドラマを面白くさせた絶妙な演出とは?『PJ ~航空救難団~』最終話考察&感想【ネタバレ】
内野聖陽主演のドラマ『PJ ~航空救難団~』(テレビ朝日系)が、最終回を迎えた。本作は、航空自衛隊航空救難団に所属する救難員、通称PJ(パラレスキュージャンパー)を育てる救難教育隊を舞台に、教官と訓練生の心震える群像劇。今回は最終話のレビューをお届けする。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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学生たちそれぞれの巣立ち
木曜ドラマ『PJ ~航空救難団~』(テレビ朝日)がついに最終回を迎えた。
この最終回まで様々な苦難や別れ、そして苦労を乗り越えた喜びがあった。もはや第8話の時点で大方のストーリーは終結していたと見ても過言ではない。
それでも、第9話では静かに、しかし確実に物語が幕引きされ、たしかな感動が胸に残った。
救難員(PJ)を目指す学生たちの訓練もいよいよ大詰めとなり、最終段階となる落下傘降下の訓練日がやってくる。数々の理不尽な訓練を乗り越えきた学生たちにとってもはや障壁ではない。だが、空に飛び出し、地に降り立つという行為は、学生たちにとっては精神的な卒業式として大きな意味を持っている。
「絶対」はないと語り、彼らを見つめる宇佐美誠司主任教官(内野聖陽)の目は厳しくも温かい。きっと空に飛び立つ彼らの姿と、親元を旅立つ子どもと重ねていたのではないだろうか。柔らかな青春と巣立ちのテーマを巧みに重ねた演出には思わず胸を打たれる。
絶妙なバランスの演出がもたらしたもの
一方で、実際に巣立つ子どもである娘・勇菜(吉川愛)とのつながりもしっかりと描かれた。卒業論文のテーマに航空自衛隊航空救難団を選んだ彼女。最初は世間一般とは一線を画す世界に引いてしまっていたが、間近で観察するうちに理解を深めていくように。さらに、歳を重ねていくにつれて溝が生まれていった父を再び尊敬するようになり、最後にはわかり合うこともできた。
これらの“サイドストーリー”はメインの物語ともリンクし、宇佐美という人間の深みを映し出してくれた。仕事と家庭の両方で見送る立場となり、宇佐美という一人の男の静かな揺れが心に残る。人を育てるとはどのようなことなのか、宇佐美は2つの“現場”で身を持って教えてくれる。
エンタメとシリアスのバランスが絶妙な配分で成り立っていた本作は、最終回でも見逃せないユニークな要素があった。それが度々登場していた“教官Tシャツ”。Tシャツの裏側に宇佐美の顔がプリントされ、学生たち全員が主任教官の前で披露する。そして、発した言葉はもちろん「あっぱれだ!」。
実は宇佐美も着用しているというのはサプライズ的な笑いだが、単なるギャグシーンに終始しているわけではない。熱い言葉には、学生たち、そして教官も全力を尽くしてきた1年間を肯定する意味が含まれている。何度も聞いてきた「あっぱれだ!」という言葉は、努力と覚悟の証として胸に響く。
改めて噛みしめる宇佐美(内野聖陽)の魅力
本作は汗と泥と涙にまみれた青春ドラマであり、言葉を選ばずに言えば暑苦しさもあったかもしれない。しかし、どこか可笑しみを忘れず、最後まで命を救うとはどういうことか、そしてPJになるとはどれほど過酷なものか、ということをまっすぐに描ききった。それこそが、多くの人々が本作を最後まで愛しきれた要因なのではないだろうか。
物語は最後、3年後まで時計を進め、宇佐美の元妻だった真子(鈴木京香)は「宇佐美真子」と名乗り入間基地衛生隊へ。そして、教え子だった沢井仁(神尾楓珠)と小牧基地でコンビを組む宇佐美曹長の左手薬指には指輪が光る。明るい未来が見え、クライマックスを迎えた。
ドラマとして過剰に続編を匂わせたわけではないと思うが、どのような形でも続編は期待できる。一人前となった65期生たちと宇佐美の物語なのか、それとも66期生ら後輩たちがまた育っていくストーリーなのか……ドラマでも映画でも制作は可能だろう。
いずれにせよ、観た人にたしかなエールを与えてくれる作品だった。これからの生活においても「あっぱれだ!」という言葉を思い出し、時には立ち止まって意味を考えてしまうだろう。それほどまでに宇佐美という人間は魅力的で、誰の心にも住まわせたくなるような存在だった。
【著者プロフィール:まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。
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