これ以上ない結末に…『続・続・最後から二番目の恋』が描き続けた“言葉のいらない関係”の美しさとは? 最終話考察&感想【ネタバレ】

text by 菜本かな

小泉今日子&中井貴一がW主演のドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)が完結を迎えた。古都・鎌倉が舞台のロマンチック&ホームコメディ。前作から11年を経て、相変わらずの二人の距離感で流れゆく人生を見つめる。今回は、最終話のレビューをお届け。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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ドラマを起こすことではなく、人生を映すこと

『続・続・最後から二番目の恋』最終話 ©フジテレビ
『続・続・最後から二番目の恋』最終話 ©フジテレビ

 ドラマなのに、ドラマティックなことが起こらない。それこそが、『続・続・最後から二番目の恋』という作品の最大の特徴であり、最大の挑戦だった。

 鎌倉の地で暮らす人々の日常の一部を切り取り、彼らの身に起きる小さな事件に寄り添っていく。脚本家・岡田惠和が、このシリーズを通してやってきたのは、ドラマを起こすことではなく、人生を映すこと。だから、過剰な演出や劇的な展開を避け、登場人物たちの心の揺れを繊細に描いてきたのだと思う。

 長倉家で繰り広げられる会話劇のなかにも、明確な起承転結はない。ただ、大人たちが自由にしゃべり、まるで子どもに戻ったかのように無邪気にはしゃいでいる様子が、静かな幸福感を醸し出していた。

 しかし、その笑い声の裏に、それぞれが抱える寂しさや不安が、垣間見える瞬間があったりして。たとえば、ふとした沈黙や、視線を逸らす仕草。そのどれもが、人生の長い午後を生きる大人たちの、言葉にならない想いが滲んでいた。

夢は叶わなかったとしても、人生は続いていく

『続・続・最後から二番目の恋』最終話 ©フジテレビ
『続・続・最後から二番目の恋』最終話 ©フジテレビ

 6月23日に放送された最終話を見て、わたしが「やっぱり、『最後から二番目の恋』シリーズだなぁ」と感じたのは、千明(小泉今日子)がプロデューサー人生のすべてを懸けて書き上げたドラマの企画書が、ボツになってしまったこと。そして、鎌倉市長に立候補した和平(中井貴一)が、あえなく落選してしまったことだ。

 一般的なドラマだったら、千明のドラマが大成功をおさめて、和平が鎌倉市長に就任。2人ともが有終の美を飾る瞬間を、ラストに持ってくるはず。だが、本作はそうはしない。千明は、企画書がボツになっても、新たな作品を作るし、市長になれなかった和平は、副市長として奮闘する。

 夢は、そう簡単には叶わない。でも、叶わなかったとしても、人生は続いていく。というか、続けていかなければならない。本作が描いてきたテーマは、浜崎あゆみが歌う主題歌「mimosa」の内容にも通ずる部分がある。

 たとえば、サビの<大人になったからって全てがうまくいく訳じゃないと知れたから歩いてるんだろう>なんかは、まさに千明が言っていそうなフレーズだ。大人になったからって全てがうまくいく訳じゃないけれど…ではなく、大人になったからって全てがうまくいく訳じゃないと“知れたから”というところがいい。

 また、ラスサビの<人を心の底から信じるだなんて何かに本気で人生賭けるだなんて今の時代にまるで合ってないことはさぁわかってんだけどそれでもねぇやっていくんだよ>も、千明の生き様にリンクしている。

 千明の還暦パーティが行われている時、「世の中を嘆き、美化するのはやめよう。正しく素敵な方向に向かっていることも、たくさんあるはずだ。それを信じよう」というモノローグが流れていた。

「あの時は、よかったな」とか、「もう歳だから仕方ない」と諦めることは簡単だ。でも、どうせ生きていかなければならないのなら、そのなかに少しでも希望を見出したい。

 もちろん、たまに後ろ向きになることもあるけれど、どうにか頑張って前を向いてみる。本作のヒロインが、強さと弱さを両立している千明だったからこそ、わたしたちはこんなにも共感し、「自分も踏ん張ってみよう」と鼓舞されたのだろう。

“言葉のいらない関係”の美しさ

『続・続・最後から二番目の恋』最終話 ©フジテレビ
『続・続・最後から二番目の恋』最終話 ©フジテレビ

 最終回で交わされた千明と和平の静かな会話は、本作が目指してきた“言葉のいらない関係”の美しさを、これ以上ない形で映し出していた。「我々は、ずーっとこのままいくんですかね」と聞く和平と、「どうなんでしょうね」ととぼける千明。

 でも、お互いに分かってはいるのだ。相手の存在が、自分の人生において必要不可欠になっていることを。

 そもそも、人はなぜ結婚という形を選ぶのだろう。“結婚”そのものに憧れがあるから? 好きな人と、より深い関係になりたいと思うから? 人間の数だけ、さまざまな結婚観があるはずだ。

 でも、千明と和平の場合は、今の関係が最高すぎるから、何かアクションを起こして変化してしまったら…と考えると、怖くなる。これは、たくさんの出会いと別れを経験してきた大人だからこその怖さだろう。

 しかし、大人になったからこそ、グレーの関係性を楽しむ余裕が持てる。そう考えたら、大人になるって悪いことばかりじゃない。

「あなたと一緒に暮らしたら、楽しいだろうし、素敵だなと思うんです。結構ちゃんと好きです」と言いながらも、「当たり前なんですけど、今まで付き合ってきた全員と別れてるんですよね。誰かと別れるとか、そういうことが、ちょっと怖いなと思います」と本音を吐露する千明に、和平は「ひとつ約束しません? シラフの約束。いつか心が解けて、怖さが薄くなったら、一緒に暮らしましょう。起きた時、すっぴんのあなたがいる暮らしがしてみたい」と二度目の“プロポーズ”をした。

 めちゃくちゃロマンティックな雰囲気だったのに、最終的にはどっちが酒豪かで揉めて、「負けませんよ。おばあちゃん」「ムカつく〜!」とじゃれ合うあたりが、やっぱり千明と和平だなぁ。いつまでも、こんな関係性が続きますように。また、いつの日か鎌倉で2人に出会えることを願って––––––。

【著者プロフィール:菜本かな】

メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。

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【了】

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