自分の「死」よりもまずは親? 綾瀬はるか“鳴海”の「推し活の凄み」に納得のワケ。『ひとりでしにたい』第2話考察レビュー【ネタバレ】

text by 菜本かな

綾瀬はるか主演のNHKドラマ『ひとりでしにたい』(毎週土曜よる10時放送)。本作は、愛猫と暮らす独身女性の主人公・鳴海が、幼少期より憧れの存在だった独身の叔母の孤独死をきっかけに、自身の終活について考える物語。今回は、第2話のレビューをお届けする。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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那須田(佐野勇斗)よ、おそらくそれは恋です。

『ひとりでしにたい』 第2話 ©NHK

 “変態孤独死死体マニア”こと那須田(佐野勇斗)の本性が明らかになった『ひとりでしにたい』第2話。どうやら、那須田は鳴海(綾瀬はるか)に意地悪がしたくて、嫌味を言っているわけではなさそうだ。

 恋愛経験値が低めなせいで、異性との距離の縮め方が下手くそなだけ。「どうなりたいってわけではないが、山口さんのことが気になって仕方がない。この気持ちはなんだ?」って…。那須田よ、おそらくそれは恋です。

 それにしても、那須田が「よっしゃ! 鳴海との距離が縮まったぞ!」と思ってやっている行動が、ことごとくマイナスプロモーションになってるのが面白すぎる。

 たとえば、鳴海の身内が孤独死をしたと聞き、「どんなふうに亡くなったんですか?」「死後、どれくらいでしたか?」「遺体写真は持ち歩いていないんですか?」と質問攻めしたやつ。これは、那須田からしたら“共通の話題を見つけられた”と思って嬉しかったらしい。しかし、当の本人・鳴海には、「危険人物だ。関わるのよそう」と思われているのがじわじわくる。

推し活は、生活の必要経費

『ひとりでしにたい』 第2話 ©NHK

 また、鳴海とコミュニケーションを取るために、「好きなんです! アイドルが! 男の!」と嘘をついたところも、「どれだけ好きなんだよ〜」とニヤニヤしてしまった。

 素直な鳴海は、那須田が“同担”だと思い込み、「ほかにもいっぱい道があるのに、アイドルになってくれて圧倒的感謝だよね!」とオタク丸出しの発言を…。さらに、「風呂に入らないで担当に会いに行くとかありえないし、コンサートに行くためなら、無駄におしゃれする! 労働も苦じゃないし、グッズ交換のためなら他人とも交流する!」と推し活の凄みをペラペラと語り出したのだ。

 すると、「推し活なんて、お金もかかるだろうし」と嫌煙していた那須田も、「推し活は希望になる」と言い出した。

 アイドルを応援していることに対して、「いい歳こいて」とか、「何のために?」とか、「見返りがないのに」とか…余計なことを言う人は、一定数いる。でも、よく考えたら、それって余計なお世話だ。

「現実を見なさい」と言われても、現実がしんどいから現実逃避をするために推し活をしている人もいるだろうし、それも大人の生きる術だと思う。実際に、鳴海だって、推しがいることで、日々に張り合いが生まれている。

 あまりにものめり込みすぎて、私生活に悪影響を及ぼすのなら良くないが、鳴海のように「推しの嫌なところ見ちゃった! 乗り換えよう!」という感じで、ポップな推し方ができるのなら、プラスしかない! むしろ、生活の必要経費だ。

元気なうちに情報を得ることが大事

『ひとりでしにたい』 第2話 ©NHK

「わたしは、ひとりで生きて、ひとりで死にたい!」と“終活”を始めることにした鳴海。ただ、自分の死や老後と向き合えるようになったものの、それよりも先にやってくるであろう親の死や老後からはまだ目を逸らしていた。

「元気なうちに情報を得ることが大事だ」と那須田は言うけれど、自分の親に「お葬式はどんな感じでしたい?」「お墓はどこに入る?」など死を連想させることは聞きづらい…という人は多いと思う。実際に、わたしの父も祖母に対してこういう質問ができなかったため、祖母が亡くなったあと「どうしてあげるのが正解だったんだろう」と自問自答していた。

 だからこそ、親の方から子どもに、自分が死んだあとのことを伝えておく or 何かメモに残しておくのがいちばんいい気がする。

 しかし、鳴海の両親は楽観的なので、何も考えていない。父・和夫(國村隼)は、雅子(松坂慶子)の方が長生きするにするはずだと決めつけているし、「そんなの分からないじゃん」とつっこまれると、「鳴海がうちに帰ってくればいい。他人に親の世話を任せるっていうのか? ありえんだろ。結婚もしていない娘が近くにいるのに」と身勝手な発言をしてくる。

「介護」と「子育て」が違う点とは?

『ひとりでしにたい』 第2話 ©NHK

 そこで、ツッコミを入れたのが、いろいろな事情があって(詳しくは、ドラマ本編をチェック!)鳴海の実家にやってきていた那須田だ。「鳴海さんに同居してもらって、面倒を見させるのはやめた方がいいと思います。結論から言えば、お父さん、鳴海さんに殺されますよ?」と言われた和夫は、一瞬にして正気を失ってしまった。

 那須田が言うに、「子育てと違い、介護は日に日にできないことが増えて絶望的になりやすい」。だからこそ、もっと真剣に“終活”について考えるべきだと伝えたかったのだろう。

 和夫が話にならなくなってしまったので、鳴海が母の雅子に「どんな老後と最期を迎えたいか、考えてみたらどうかな?」と言うと、雅子は「お父さんに余計なことを吹き込まないで!」とアワアワ。

 どうやら、雅子は和夫との熟年離婚を考えているようで…? これはもう、鳴海も自分の終活どころじゃな〜い! それにしても、重めのテーマを扱ったドラマなのに、どうしてこんなにポップに描けるのだろう。さすが、NHKドラマ…! という感じだ。

【著者プロフィール:菜本かな】

メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。

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