どんなドラマよりも生っぽい…会話劇にイライラしながらも笑ってしまったワケ。『こんばんは、朝山家です。』第1話考察&感想【ネタバレ】

text by あまのさき

中村アン&小澤征悦がW主演を務めるドラマ『こんばんは、朝山家です。』(ABCテレビ・テレビ朝日系)が放送開始した。本作は、“キレる妻”と“残念な夫”という衝突不可避の夫婦、愛しくも奇妙な家族の物語だ。今回は、第1話のレビューをお届けする。(文・あまのさき)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 感想 レビュー】

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どんなドラマよりも“生っぽい”

ドラマ『こんばんは、朝山家です。』ⒸABCテレビ
ドラマ『こんばんは、朝山家です。』ⒸABCテレビ

 連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK総合、2024)の脚本を手掛けた足立紳の連載「後ろ向きで進む」をベースに制作されたという『こんばんは、朝山家です。』がはじまった。正直、“朝ドラ”の脚本家の日常なんて、さぞ優雅なものなのだろうと思ったのだが、これが全く違う。

 “朝ドラ”ではなく国民的ドラマ=“国ドラ”の初回放送日から物語ははじまる。モノであふれた家のなかで、執筆した張本人である朝山賢太(小澤征悦)は、一緒に国ドラを観ようと家族たちをテレビの前に集めようとするが、誰もまともに取り合ってくれない。

 長女で高校1年生の蝶子(渡邉心結)は、朝の支度の最中だからと賢太を軽くあしらい、小学6年生の息子・晴太(嶋田鉄太)は発達障がいの特性により朝が苦手でグズるばかり。そして、賢太の所属する事務所の社長を務める妻の朝子(中村アン)はキレ続けている。

 そうはいっても記念すべき日だ。朝ごはんも、蝶子のお弁当も用意してテレビの前で1人寂しく国ドラを観る賢太があまりにも可哀想ではないかとも思うのだが、賢太も賢太でちょっとどうしようもない。

 1日家にいる様子なのに、朝子から言われた洗濯物を干し、晴太を学校行かせることもまともにせず、エゴサーチに明け暮れる。はっと気づいたときにはお昼前という有様だ。

思わずクスりとなる夫婦の口論

『こんばんは、朝山家です。』第1話 ⒸABCテレビ
『こんばんは、朝山家です。』第1話 ⒸABCテレビ

 一方の朝子は、映画を撮りたいという賢太の夢を叶えるために奔走していた。企画を持ち込んだ制作会社の梶本(宇野祥平)の反応は鈍かったが、その部下で朝子の友人でもある桐子(さとうほなみ)は「面白い」と高評価。キャスト次第では映画化の話を進められると朝子の背中を押した。

 本作は、この映画製作を主軸としつつ、家族の悲喜こもごもというか、ドタバタが描かれていくのだろう。

 自分で映画をつくりたいと言ったくせに、フルキャストオーディションがいいとごねたり、桐子が推す主演候補の俳優に会うことを尻込みしたり、実現に奔走する朝子の目線からすると賢太の反応は煮え切らず、観ているこちらもうっかりイライラしそうになる。ただ、それを上回る熱量で朝子が賢太にキレ倒してくれるのは爽快だ。

 だからといって、別に朝子が完璧な人間ではないというところもいい。

 朝子曰く、賢太は自分のプライドを傷つけない相手としかつるまず、国ドラの放送初日も、事務所に所属する売れない俳優たちと昼から酒を酌み交わしていた。彼らは賢太のことを持て囃しつつも、バーター狙いだったり飲み代を持ってもらうだったり、下心があるのは明白だ。でも、それでもいいから褒められたいし認められたい、というのが賢太の本音だろう。

  そして、それは朝子だって同じだ。打ち合わせという名のお茶をしながら、桐子に「あっちゃんはよくやってるよ」と言われ、それに力をもらっていた。賢太ほどの承認欲求はないにしても、自分を認めてくれる人と積極的に関わりを持ちたいのは当然のことだ。

 そんなふうに朝子の目線に共感しながらも、よくよく聞いていると“ブーメラン”もある口論にクスリと笑いながら、自分の日々のイライラの些末さがバカバカしくも思えてくる。

家族の問題を真正面から描き出す

ドラマ『こんばんは、朝山家です。』ⒸABCテレビ
ドラマ『こんばんは、朝山家です。』ⒸABCテレビ

 だが、目下の大きな問題は子どもたちだろう。野球部に所属しながらも協調性のない蝶子も心配だし、蝶子と晴太の折り合いが悪いのも心配だ。

 特に、発達障がいのある晴太を「怠け者」で、両親から「特別扱い」されているという見方をしている点。これは病気や障がいを持つ兄弟姉妹がいる「きょうだい児」の内面を、こんな風に真正面から描き出す作品もなかなか珍しいのではないだろうか。

 一家奮闘ホームドラマとして、1話の時点でテンポのよさが際立った。朝子と桐子のカフェでのシーンなんて、朝子のくしゃみや店員さんがホットコーヒーとアイスコーヒーを間違えるところなど自然そのものだったし、賢太たちの居酒屋のシーンもとても生っぽかった。そしてなにより、蝶子と晴太を演じる2人が上手い。

 コメディでありながら、どんな家族の問題が表出してくるのか。会話劇を楽しみながら、朝山家の人々を見守りたい。

【著者プロフィール:あまのさき】

アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。

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【了】

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