佐野勇斗“那須田”が最高にカワイイ…リアルすぎる「熟年離婚」の金銭事情とは? 『ひとりでしにたい』第3話考察&感想【ネタバレ】
綾瀬はるか主演のNHKドラマ『ひとりでしにたい』(毎週土曜よる10時放送)。本作は、愛猫と暮らす独身女性の主人公・鳴海が、幼少期より憧れの存在だった独身の叔母の孤独死をきっかけに、自身の終活について考える物語。今回は、第3話のレビューをお届けする。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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“熟年離婚”の金銭事情のリアルとは?
『ひとりでしにたい』第3話のメインテーマは、“熟年離婚”について。自分の“終活”を始めようとする鳴海(綾瀬はるか)は、「いやいや、先に親に終活をさせた方がいいんじゃね?」と思いつき、那須田(佐野勇斗)とともに実家に乗り込んだ。
しかし、そこで思わぬ事態に直面する。なんと、母・雅子(松坂慶子)が熟年離婚を企てていたのだ。
今回も、「さすがNHKドラマ!」と唸るポイントが満載。なかでも印象的だったのが、熟年離婚の厳しさを、あえてポップに描いていたところだ。たとえば、鳴海の同僚がサラッと語った“離婚後の金銭事情”のリアル。
「離婚すれば、夫の年金が半分もらえると思ってる人は多いけど、実は厚生年金の半分しかもらえない。それも、婚姻期間の分だけ」「自分の国民年金分を足しても、月に10万円以下とかザラだよ〜」「父親の方も年金取られるから、W貧乏になって子どもにのしかかってくる」などなど。
さすがの鳴海も、こんなことを聞いてしまったら、テンションダウン。しかし、鳴海の実家が“太い”ことが分かると、同僚たちは「あっ、じゃあ家を売れば4000万…半額の2000万あればいける! いけるよ!」と離婚を後押し。そこで、鳴海が「いや、だからいっちゃダメなんだって!」とツッコミを入れるものだから、思わず笑ってしまった。
定年後の夫の役割は?
また、“熟年離婚”を考える主婦の心情をここまでリアルに描いている作品も、なかなかめずらしい。専業主婦の雅子は、これまでひとりで家事や育児をこなしてきた。
夫の和夫(國村隼)にも“働く”という役割があったので、腹が立つことがあっても、「仕方がない」と諦めることができたのだろう。しかし、和夫が定年退職を迎えたいま、夫婦間の“ギブアンドテイク”が成り立たなくなってしまった。
たとえば、座りながら「お茶」と言われたとして。今までなら、「仕事で疲れているから、仕方ないわね」と思うことができた。でも、今は「もう働いていないんだから、それくらい自分でやってよ」とイラッとしてしまう。
とはいえ、長年続けてきてしまった“役割分担”は、そう簡単に変えることはできない。しかも、相手は堅物の和夫だ。だからこそ、「人生100年時代。何もしてくれない人にしてあげる生活を何十年も続けるくらいなら、ひとりで苦労した方がマシじゃない?」という境地にたどり着いてしまったのだと思う。
正直、熟年離婚をする夫婦の多くは、“チリツモの限界”が引き金になっているのだと思っていた。たしかに、雅子も「義理の姉にいびられても知らんぷりだった」「自分の親の介護はさせてきたくせに、わたしの親にはノータッチ」「俺の仕事はお前の仕事、お前の仕事は俺の仕事って感じのジャイアン気質が腹立つ」などとこれまでの不満をこぼしてはいた。だけど、本質はそこだけじゃない。
本当にしんどいのは、“ギブアンドテイク”が成り立たなくなったことで、“我慢の理由”がなくなってしまったことだ。だからこそ、和夫のような“仕事人間”は、定年退職をしたあと、自分の“新しい役割”を見つけなければならない。“今までどおり”でいることが、家庭の崩壊を招くことがある――そんな恐ろしくもリアルな現実を、このドラマは突きつけてくる。
日本は“家族”に重きを置かれがち
そこで、ふたたび鳴海の実家に乗り込むことになったのが、“こじらせ男子”の那須田だ。彼は、人の気持ちを理解したり、誰かと心を通わせることは苦手だが、論理的にプレゼンテーションをすることが本当にうまい。
たとえば、典型的な昭和のサラリーマンである和夫に、「家庭でも在り方を変えた方がいい」と提案をする時、那須田は“家庭”を“会社”にたとえて説明していた。「会社の全権をお母さんに渡しちゃってるんですから」と言われた和夫は、「なに言ってんだよ! そんなの渡してなんか…」と返すが、「今の家計の状態や貴重品の場所、把握してますか? 会社の資産状況や重要書類の場所を把握していない経営者はいないですよね。今まで管理は丸投げでも、労働で会社経営に参加していたわけですから。今は労働もしてないわけですから」とツラツラ語られてしまったら、ひゅるひゅると座り込むことしかできない。
ただ、那須田のおかげで、家計簿と通帳の管理をしたり、自治体の高齢者セミナーに行ったりと、和夫に“アクション”を起こさせるきっかけができた。しかし、離婚を考えている雅子にとって、それは「余計なこと」だったのだろう。
でも、鳴海が言うように、日本は“家族”に重きを置かれがち。「友達が近くに住んでいるから」と言っても、ひとり暮らしの老人に家を貸してくれる大家はそういない。「多少ポンコツでも、家族は捨てずにリフォームして使った方が賢いと思う」という鳴海のアドバイスは、雅子の心を動かすことができるのだろうか。
那須田(佐野勇斗)が可愛すぎる…!
また、最後に今週の“那須田くんの可愛いポイント”についても触れて行きたい。まず、雅子が熟年離婚を企てていることに気づいた鳴海が、「那須田くん、どうしよう」と助けを求めた時、那須田は「すみません。分かりません」とまるで“Siri”のような返答をしていた。しかし、帰宅したあとに「どうしよう。あの顔は、甘えていたのか? 俺に」「俺は、フラグをへし折ったのか?」とグジグジ悩んでいた(ただ、どれも検討はずれ)なのが可愛い。
また、鳴海が「相談ばかりしてごめんね」と言った時に、那須田は「大丈夫です。楽しいですから」と返し、心のなかで「山口さんといるのが」とつぶやいていた。
しかし、その真意がまったく伝わらず、「そりゃ、人の不幸は蜜の味っていうけどさ〜」と言われてしまう。「ニホンゴ、ムズカシイ」とバレないように口をむうっとする那須田、最高にラブリーすぎました。
今、バズりにバズっているM!LKの楽曲「イイじゃん」のパロディで「いらないじゃん」まで飛び出した第3話。次週も、キュートな那須田が見られるのが楽しみだ。
【著者プロフィール:菜本かな】
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。
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