まさかここまでハマるとは…小澤征悦の「猫背」に感じる絶妙な腹立たしさとは?『こんばんは、朝山家です。』考察&感想【ネタバレ】
中村アン&小澤征悦がW主演を務めるドラマ『こんばんは、朝山家です。』(ABCテレビ・テレビ朝日系)が放送中だ。本作は、“キレる妻”と“残念な夫”という衝突不可避の夫婦、愛しくも奇妙な家族の物語。今回は、第3話のレビューをお届けする。(文・あまのさき)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 感想 レビュー】
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賢太(小澤征悦)の映画企画が遂に動き出す――。
1週間放送が空いた“可哀想な”第3話「一言多いのに話は聞いてくれない」では、朝山家の長女・蝶子(渡邉心結)の悲しみというか、居場所のなさみが浮き彫りになった。
自分たち家族をモデルにした映画企画が大物俳優に出演を断られたことで、賢太(小澤征悦)はやや傷心気味。一方、こんなことでめげていられない朝子(中村アン)は、最近露出は減ったものの、賢太と似た雰囲気の俳優・吉浦亮(丸山智己)を夫役に、妻役には大日方香(河合青葉)はどうか? と友人で映画プロデューサーの桐子(さとうほなみ)に提案。桐子も行動力のある朝子を褒めつつキャスティング案に同意し、打ち合わせの場を設けることに。
吉浦は「自分が主演で企画は通るのか?」と不安げ…というより、きっとただ自分の背中を押してくれるような言葉を期待していただけなのだろうが、なんだか煮え切らない態度。たしかに、こういうところは賢太にそっくりだ。
そして、時間を間違えて早めにやって来た大日方はというと、「風を感じる」と賢太の台本を褒め、二つ返事で出演を快諾した。ただ、“歯に衣着せない”という触れ込みの通り、吉浦に向かって「最近観ないけど」とストレートに聞くなど、ずけずけものを言う。言い過ぎる。イライラしている感じはないものの、朝子っぽい人柄なのが見て取れる。
賢太を演じる小澤と、吉浦を演じる丸山。本人のイメージは、どちらも今回の役とは異なると思うのだが、逆撫でまではいかない、ちょうどいい具合に人の神経をふわっと撫でるような絶妙な腹立たしさを醸し出している。曖昧な言い方が並ぶセリフももちろん秀逸なのだが、その中途半端な笑顔! その猫背! など、造形が非常に“それっぽい”。2人とも、こういう役がハマるとは思わなかった。
そんなこんなで、大日方に丸め込まれる形で吉浦も出演を承諾し、見事に企画が通ることに。
「穏やかな家庭」が、この家族には一番難しい!
これにてひと段落…とはいかないのが朝山家で、相変わらず息子の晴太(嶋田鉄太)はやっとの思いで学校へ行く日々を過ごしている。給食の前に「遅れましたー」と登校したかと思えば自席には座らず、教室の隅っこで本を読む。しかし、これを1回の登校にカウントし、賢太は晴太にご褒美のマンガを買い与えてしまう。
この状況を危惧した朝子は、療育センター「ソーラー」でのペアレントトレーニングで相談する。陸先生(小島健)も学校へ行けていなかった過去があったらしいのは意外だったが、トレーニング中にもケンカをおっぱじめそうな朝山夫妻を前に、どちらのことを強く否定するでもなく、丁寧に指導していく。
曰く、とにかく「家庭が穏やかである」ことが大事らしいのだが、この家族にとってそれはなかなか難しそう。
実際、その日の夜だって会話できるチームメイトがいないという愚痴を聞いてほしい蝶子の話を、散々揉めた末に晴太が掻っ攫っていく。賢太は適当に相槌を打ち、朝子はこれ以上発展させるまいと口をつぐむ。蝶子はもう、諦めてしまったようだ。
孤立する蝶子(渡邉心結)
蝶子には居場所がない。家にも、野球が楽しいという理由だけでなんとか続けられているチームにも。
朝子は仕事や晴太のことでいっぱいいっぱいだし、賢太はエゴサ(と、たぶん仕事)が忙しい。どうにかしなければならない晴太の問題を前に、一応生活に支障もなく解決策が出そうもない蝶子の問題は後回しになってしまっている。
蝶子自身も朝子に輪をかけて常に不機嫌にしているし、チームでは話しかけられ待ちで自分からコミュニケーションを取りに行く努力はしていないようなのだが、そうは言っても、せめて家庭ではこの孤立感から掬い上げてほしいと思ってしまう。
高校生という多感な年ごろだし、せめて母親が話し相手になれないものかと思うのだが、毎回朝子のお風呂に居合わせるのは賢太だし、次回予告では晴太が扉の前に立っていた。そのちょっとの時間、蝶子に譲ってもらうことはできないだろうか…?
思っている以上に朝子との相性が悪いのなら仕方がないのだが、自分が親にとっての1番ではないことを理解していてあえて身を引いているのだとしたら、蝶子があまりにも可哀想だ。
話したいのに、聞いてくれない。当初から決まっていたとはいえ、外的要因で放送が1週空いてしまった3話を“可哀想”と表現した蝶子のナレーションが、自分と重ね合わせた言葉だったのかも、なんて深読みしてじんわりと悲しくなってしまった。
【著者プロフィール:あまのさき】
アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。
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