生田絵梨花の迷いに共感…白鳥玉季の「不安定さ」に感じる説得力とは?『明日はもっと、いい日になる』第4話考察&感想【ネタバレ】
福原遥が主演を務める月9ドラマ『明日はもっと、いい日になる』(フジテレビ系)が放送中。本作は、児童相談所に出向となった刑事が、こどもたちとその親と向き合い、ともに成長していく姿を描いた完全オリジナルストーリーだ。今回は4話のレビューをお届けする。(文・古澤椋子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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児童相談所の支援対象からこぼれ落ちてしまう存在
子どもは愛の大きさとその裏側にある感情を見定めている。児童心理司の蒔田向日葵(生田絵梨花)のメイン回となった『明日はもっと、いい日になる』第4話は、大人が子どもにどう関わるべきなのかを示す回となった。
第1話から描写されていた向日葵の水曜日の用事とは、過去に担当した女子高生・石田葉月(白鳥玉季)に会うという用事だった。夏井翼(福原遥)が、個人的にクライアントに関わることに難色を示していた向日葵だったが、向日葵自身も、児童相談所の職務とは無関係な形でクライアントに関わっていたのだ。
向日葵の行動は矛盾しているようにも見えるが、葉月の家庭状況を聞くと少し納得してしまった。シングルマザーで葉月を育てていた母親は、新しい父親・石田和也(小手伸也)と結婚後にすでに死亡しており、現在は別の女性と再婚している。葉月には血のつながった親がいないのだ。
葉月に、クレジットカードを渡し、金銭面ではきちんと葉月の養育義務を満たしている和也に対して、児童相談所は口出しができない。葉月は無意識のSOSを出しているのに、児童相談所の支援対象からこぼれ落ちてしまう存在なのだ。それを理解しているからこそ、向日葵は葉月に対する個人的な支援を続けているのだろう。
児童心理司とクライアントとしての一線
向日葵になついている葉月の姿や嬉しそうに彼氏の敦(駒木根葵汰)を紹介する葉月は、自分の方を向いてくれる人物を切に求めているように見える。血のつながっていない親から放任されているという状況は、葉月にとって親が自分に興味がないことの表れとして捉えているのだろう。
だからこそ向日葵の存在を求めていた。葉月が向日葵に心を開いたのは、自分の持ち物に目を向けてプレゼントをくれるという愛が表れた行動をしてくれたからだ。だからこそ、向日葵からの「葉月ちゃんをちゃんとケアしたい」という言葉はショックだったのだろう。
向日葵にとっては葉月への精一杯の愛を伝えたつもりであっても、“児童心理司とクライアントの関係”という一線を感じさせるその言葉は、葉月にとって突き放されたように感じられたのだろう。
葉月を演じたのは、『テセウスの船』(TBS系、2020)や『いちばんすきな花』(フジテレビ系、2023)などさまざまな作品で名子役ぶりを見せてきた白鳥玉季だ。向日葵を前にしたときの心を開いた人懐っこい笑顔は年相応な一方で、向日葵を前に激昂する態度は子どもっぽく、生い立ちから来る不安定な部分が丁寧に映し出されていた。
最後のシーンでは愛に飢えて騙されかけるという経験から、ほんの少し不安を手放し自分の足で立とうとする大人らしさが見えた。17歳という大人を目前にしながらもまだ子どもである立場と葉月の特殊な状況を白鳥がリアルに体現して見せたからこそ、本エピソードは成り立ったといえるだろう。
仕事とは無関係の無性の愛
今回、向日葵が葉月と上手に向き合えたのは、児童心理司としてではなく向日葵個人としての思いを伝えたからだ。それは、向日葵が長年、葉月と向き合ってきたからこそできたことだろう。
向日葵から葉月への愛の裏には、仕事とは無関係の無性の愛があったのだ。それを伝えるべきか、伝えるべきではないのか。蔵田総介(林遣都)の言葉を借りれば、首を突っ込むべきかどうか。児童相談所で働く者は、常にそんな2択を迫られているのかもしれない。
第4話では、翼を訴えると言い出した安西夢乃(尾碕真花)が心を入れ替えて、変わる努力をすると宣言し、ペアレントトレーニングの入り口に立った。
しかし、第4話の最後には、恋人と思しき相手と連絡を取っている夢乃の姿があり、不穏な空気を感じるシーンだった。叶夢(千葉惣二朗)と奏夢(小時田咲空)は、翼にとって叶夢の言葉を促したことで助け出すことができた特別な存在だ。もし、夢乃のペアレントトレーニングがうまくいかなかった場合や夢乃が叶夢と奏夢を裏切った場合、翼が感情的になってしまうなんてこともあり得るかもしれない。
翼の中にある叶夢と奏夢への愛情が裏目に出るような展開にならないことを祈りたい。
【著者プロフィール:古澤椋子】
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
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