藤木直人”土門”の過去の真相がつらすぎる…救われない結末に込められた希望とは?『最後の鑑定人』第4話考察&感想【ネタバレ】
藤木直人主演のドラマ『最後の鑑定人』(フジテレビ系)がスタートした。藤木演じる敏腕鑑定人が、白石麻衣演じるウソを見抜くのが得意な研究員とともに、科学的アプローチを駆使して難事件の真相を暴いく本格サイエンス×ミステリー。今回は第4話のレビューをお届けする。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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7年前の真実に立ち向かう土門(藤木直人)
「科学は嘘をつかない」
その信条を掲げてきた鑑定人・土門(藤木直人)だが、過去には一度裏切ってしまったことがあった。そんな苦い過去と向き合うこととなる。
30日に放送された第4話、西村葉留佳(佐藤めぐみ)が亡くなったとの報せに土門は動揺を隠せない。彼女は捜査一課の元刑事で、7年前に土門と連続通り魔事件を捜査していた。
一度は犯人逮捕に至るが、後に誤認逮捕だったことが明らかとなり、マスコミからバッシングを受けた。その結果、葉留佳は警察を辞め、自身の鑑定を信じ切ることができなかった土門も科捜研を去った。
事件から7年が経ち、葉留佳が亡くなったことを知り、真犯人を追うことを決意した土門。当時は科捜研という組織にいながら一匹狼が強かったが、現在は個人で鑑定所を営みながらも土門の周りには高倉(白石麻衣)や尾藤(松雪泰子)といった助けてくれる仲間がいるのは象徴的だ。月日が彼を人間的に成長させ、大事な信条を貫くことができるようになったことを示す。
奪われた命と、向き合う勇気
改めてわずかな残留物から事件を解き直していく土門。鑑定は時が過ぎても取り戻すことができるということを明らかにするが、その一方で真実が明らかになってもすべてが救われるわけではないという残酷な事実も浮き彫りにする。
凶器となったバットを再鑑定した結果、真犯人は補導歴のある少年・土木隼人だったことが明らかに。当時から葉留佳は気づいていたが、かばうためにスニーカーという重要な証拠を保管していた。
さらに、葉留佳は死ぬ直前にも土木に自首を勧めようとしたが、幸せな家庭を持っていることを知って口を閉ざすことに。しかし、彼女本人が重圧に耐えきれず自殺を選んでしまった。
土門はたしかに真実を明らかにすることができたが、それでも葉留佳は帰ってこない。土門自身も7年前に自分自身の鑑定をもっと信じていればという苦しみから逃れることはできないだろう。
だが、科学捜査で携わる以上、土門たちは真実と向き合い続けなければならない。鑑定という行為の本質が、過去を洗い直す作業である以上、そこにはどうしても「もう遅い」という壁が立ちはだかる。
しかし、それでも誰かが事実を見つめ、過ちと向き合おうとする限り、人は救われうる――そんな一筋の希望を、このドラマは丁寧に描き続けている。
“正しさ”を信じ続けることの難しさ
この回でのもう一つの軸は、“正しさ”を信じ続けることの難しさだ。葉留佳は、かつて正義を信じ、捜査に命を懸けていた。だが誤認逮捕という結果が突きつけられたとき、その信念は一転して自分を追い詰める刃になっただろう。
一方で、彼女は証拠を整理し続けていた。そこには、自分の判断が間違っていたことを認め、せめて真実に近づこうとする“贖罪”の意志が読み取れる。彼女は彼女なりに自分自身の信念を貫こうとしていたわけだ。
土門もまた、過去に自分が下した判断と向き合い、遅ればせながらも“正しさ”を取り戻そうとしていた。彼の鑑定は、決して万能ではない。だが、たとえ手遅れでも、事実と向き合おうとする姿勢には、静かな覚悟がにじむ。
鑑定とは誰の何のためにあるのか
鑑定とは何なのか、科学捜査とは誰のためにあるのか。第4話は、その問いに対して明確な答えを提示してはいない。ただ一つ確かなのは、科学が「誰かの痛み」を無視せず、それを浮かび上がらせる手段であるということだ。
真実が明らかになったからといって、過去は消えないし、死者は戻らない。だが、遺された者にとって、それは前を向き新たな人生を歩み直すきっかけになるかもしれない。少なくとも、土木は罪を償うことを決意した。
第4話は苦しく、救われないような残酷な現実を示してきた。しかし、鑑定で真実を知ること自体、苦しみと向き合うことなのかもしれない。知らなければ前に進むことはできない。そんなリアルを私たちに突きつける回となっていた。
【著者プロフィール:まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。
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