「青春」が一気に押し寄せる…個人戦とは違う「団体戦」ならではの醍醐味とは?『ちはやふる-めぐり-』第4話考察&感想【ネタバレ】
當真あみが主演を務める7月期水曜ドラマ『ちはやふる-めぐり-』。本作は、競技かるたに青春をかける高校生たちの姿を熱く描いた、映画シリーズから10年後、バトンを受け継いだ令和の高校生たちの青春を描くオリジナルストーリーだ。今回は、第4話のレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
——————————
強豪校との強化合宿
「かるたやろうよ、5人で」
競技かるたは一人ではできない。対戦してくれる相手がいて、初めて成立する。団体戦なら、少なくとも5人必要。「一緒にかるたやろうよ」は仲間になるための最初の合図だ。
部員が5人揃った新生・梅園かるた部の初の強化合宿が行われることになった。塾の合宿と日程がかぶってしまっためぐる(當真あみ)も、両親に嘘をついて参加することに。山奥にある合宿所で一同を待ち受けていたのは、北央学園かるた部の部員たちだ。
北央は千早(広瀬すず)が顧問として何度も全国優勝に導いてきた王者・瑞沢と双璧をなす学校。北央のOBである“ヒョロくん”こと木梨浩(坂口涼太郎)が奏(上白石萌音)の頼みを受け、今はまだ弱小の梅園との合同合宿を快諾してくれた。
原作漫画で、奏が「強い敵は強い味方」と言っていたことを思い出す。ライバルがいるからこそ、人間は負けまいと努力するもの。お互いに高め合うことのできる相手との結びつきは強い。だから、いざという時はヒョロくんのように味方にもなってくれるのだろう。
ライバルから学ぶことも多い。団体戦で北央のスピードと大きなかけ声に圧倒される梅園。なぜ彼らが大きな声を出すのか、めぐるには理解できなかった。
そもそも団体戦といえども、競技かるたの場合は1対1×5の対戦だ。だとするなら、個人戦と何が違うのか。めぐるたちはこの強化合宿で、団体戦ならではの醍醐味を知ることとなる。
奥山を歩いていたのは人なのか、それとも…。
『ちはやふるーめぐりー』第4話は「おくやまに」というサブタイトルが表すように、奥山 春馬(高村佳偉人)が主役の回。
入部以前からかるた会に所属し、C級選手でもある春馬だが、試合が始まると目眩がするイップスに悩まされている。せめてマネージャーとしてみんなの役に立とうと調理場に立った時、外から聞こえてくるのは鹿の鳴き声だ。
その切ない響きに秋の寂寥感を見出した歌人の猿丸太夫は〈奥山に 紅葉踏みわけ なく鹿の声きく時ぞ 秋は悲しき〉という歌を詠んだ。
ただし、この歌はどこで区切るかによって意味が変わる。山奥で紅葉を踏み分けながら歩いていたのは鹿なのか、それとも人なのか。どちらの解釈で読むかは人それぞれであり、そこに“その人”が現れるのかもしれない。
その声は新しい仲間に届く
「ずっと思ってたんです。山奥で一人さみしくないてたのって、本当に鹿だけだったのかなあって」
春馬は鹿の鳴き声を聞きながら、一人さみしく泣いていた人がそこにいたと考えていた。そして、その人に自分自身を重ねていたのだろう。家族はみなA級選手で、唯一C級の自分を将来の名人として期待される双子の弟・翔(大西利空)は恥じている。
試合の時、必ず目眩がするのは自分も早く追いつかなければというプレッシャーによるものなのかもしれない。そのせいでかるた部の仲間に迷惑をかけていることに負い目を感じ、自ら群れを離れて一人になろうとする春馬。
そんな彼を引き止めたのは仲間の声だ。「あの子はもう大丈夫だよ。僕はここにいるよって、きっと声は届くはず。新しい仲間に」。
無意識のうちに春馬が出していたサインに、みんなが応えてくれた。その声を受け、合宿所に戻った春馬は翔と対戦。
再びイップスに襲われる春馬を励まそうと、思わず「春まんファイトッ!」と声を上げためぐるに続いてみんなが声援を送る。その結果、春馬は翔を相手に札を取ることに成功するのだった。
避けてきた青春がめぐる(當真あみ)に押し寄せる
孤独を感じていたのは、きっと春馬だけではない。先輩たちが卒業して部に一人取り残された草太(山時聡真)も、幼馴染のために泣く泣く野球を諦めた千江莉(嵐莉菜)も、自分が本当にやりたいことか分からないままボクシングを続けてきた風希(齋藤潤)も、目の前の青春よりも将来への投資に精を出してきためぐるも、きっと大なり小なり心細い気持ちを抱えていたのではないだろうか。
そんな彼らが、かけ声で一つになる。北央生たちがみんなで大広間を掃除するのも一体感を高めるためだった。仲間の存在が自分を強くしてくれる。北央の副将・黒田(橘優輝)の「団体戦は決して個人戦の寄せ集めにあらず」という言葉の意味を、めぐるはようやく理解した。
5人が本当の意味で仲間になったその日の夜。気持ちが高ぶって寝付けないめぐると風希は2人きりで夜風に当たる。かるたしかしていなかった2日間だったけれど、「一生忘れなさそう」と星を見上げるめぐるの横顔に見惚れる風希の中でほのかな恋心が芽生えるのを感じた。
部活、友情、恋。これまで自分には贅沢だと避けてきた青春が、一気にめぐるに押し寄せている。しかし、そこにめぐるが青春から遠のくきっかけとなった両親の存在が立ちはだかるのだった。
【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
【関連記事】
・【写真】當真あみが可愛すぎる…貴重な未公開写真はこちら。『ちはやふる-めぐり-』第4話劇中カット一覧
・矢本悠馬”旧友”の登場が熱すぎる…他の競技とは違う「競技かるた」の特異性とは?『ちはやふる-めぐり-』第3話考察&感想【ネタバレ】
・『ちはやふる-めぐり-』は大人こそ見るべき…「嬉し涙」ではなく「悔し涙」に惹きつけられるワケ。第2話考察&感想レビュー【ネタバレ】
【了】