「憧れの刑事役ができる」ドラマ『最後の鑑定人』中沢元紀が役作りを語る。俳優をめざしたきっかけとは? 単独インタビュー

text by あまのさき

岩井圭也の同名小説が原作のサイエンス×ミステリー作品としたドラマ『最後の鑑定人』(フジテレビ系)が放送中だ。本作で神奈川県警捜査一課の若手・都丸勇人を演じている中沢元紀さんにインタビューを敢行。憧れだったという初の刑事役への意気込みや、役者としてこれまでの歩みなど、たっぷりとお聞きした。(取材・文:あまのさき)

——————————

仲間でもあり、ライバルーー。
役者仲間たちとの絆

中沢元紀 写真:武馬怜子
中沢元紀 写真:武馬怜子

―――まず、これまでにご出演された作品のお話から伺っていきたいのですが、『下剋上球児』(TBS系、2023)にはじまり『ひだまりが聴こえる』(テレ東系、2024)、『あんぱん』(NHK総合、2025)…と、話題作に多数出演しています。

「そうですね、一つひとつやらせていただいているな、と。『下剋上球児』から考えると約2年間、本当に現場や出会う人に恵まれて、またご一緒するためにがんばろうという気持ちしかないです。

『下剋上球児』で球児役だった人たちとは、よく連絡も取りますし遊ぶことも多いです。ただ、やっぱり仲間だけどライバルでもあるので、彼らが出ている作品はチェックしていますし、なかには『それ、俺もオーディションを受けに行ったな』みたいなものも。やっぱり負けたくないなという思いはあります」

―――また、直近の出演作だと『あんぱん』がありますが、長い期間同じ役をやるという意味で特殊な経験だったのではないかと想像するのですが、千尋役を通して役との向き合い方は変わりましたか?

「いえ、ベースは変わっていないですね。役を一番深く考えて、愛して、その役を演じる自分自身の要素も入れつつ。でも、千尋に関してはモデルになっている方がいらっしゃいますし、戦争を扱う作品でもあったので、いつも以上に調べましたし、考えないといけないことがたくさんありました。演じる責任という意味では、これまでの役よりも強かったかもしれないですね」

―――自分の要素を入れつつ、とのことですが、役をつくるときは自分を寄せていくことが多いんですか?

「自分が演じる以上、意識せずとも要素は入ると思っています。でも、自分ごとにする作業はよくしますね。僕は基本的にそんなに明るいタイプではないんですけど、人って接している相手によって変わると思っていて、明るい役を演じるのであれば、この人と一緒にいるときに似ている感じかなというのを見つけながら、その要素を思い出して役づくりをしています」

―――ちなみに、千尋を演じるにあたって8kg増量したそうですね。

「そうですね。たくさん食べることを意識して、筋トレして全部筋肉に変えていきました。でも、たんぱく質を摂ることは意識しましたが、好きなものを食べられたので苦ではなかったですし、目標があったので筋トレもがんばれました。役によって体型や髪型、髪色を変えるという作業が好きなんです。いまはもうだいぶ落としました。千尋のままだと、スーツがパツンパツンになってしまうので(笑)」

いつかやりたかった憧れの刑事役

中沢元紀 写真:武馬怜子
中沢元紀 写真:武馬怜子

―――現在は『最後の鑑定人』に出演中ですが、出演が決まったときのお気持ちを教えてください。

「初めて憧れの刑事役ができるというのがうれしかったですね。いつかやりたいと思っていたのですが、このタイミングで演じることができてすごくうれしいですし、職業ものの作品に出られることもうれしいです」

―――刑事役に憧れがあったんですね。これまで観たなかで好きな刑事ドラマはありますか?

「本当にいっぱいあるんですけど…俳優になりたいと思ったきっかけの作品は、小栗旬さん主演の『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(カンテレ・フジテレビ系、2017)でした。ほかには岡田准一さん主演の『SP 警視庁警備部警護課第四係』シリーズ(フジテレビ系)とかが好きですね」

―――本作の台本を読んで、どんなところに面白さを感じましたか?

「やっぱり科学捜査のすごさですね。知識がなかったので、こういうやり方で事件が解決していくんだ、と想像がつかないことばかりだったのが新鮮でした。捜査方法も専門的で、わからない方も多いと思うんですけど、それもしっかり台本のなかで説明されていますし、難しいけど観やすいんじゃないかなと思います」

―――作品のテイスト的には理系ですが、ご自身は?

「(食い気味に)文系です。なので、薬品の名前など、ローマ字と数字が並んでいて、なんのこっちゃ? と思いながら、知らない単語を調べるところからはじめました。言い慣れていない感じが出ないように、刑事らしく滑舌よく、意識してがんばっています」

―――今回演じる都丸についてはどんな風に捉えていますか? もしご自身との共通点があれば教えてください。

「すごく熱い男ですよね。事件に対しても一生懸命ですし、向上心もすごい。一方で、白石麻衣さん演じる高倉に『単純なタイプです』と分析されてしまうくらい、素直でかわいらしい役だと思っています。共通点は、どうなんですかね…都丸と違って自分はわかりやすいタイプではないと思うんですけど、表に出ないだけで心の中ではすごく感情が動いているほうだとは思います。

たとえば1話で藤木直人さん演じる土門先生に翻弄されているところなんかは、気持ちの面では共感しながら演じていました(笑)。なので、自分の感情をあまり包み隠さずに演じようというのは考えていましたね。あとは、僕も好きなことに対してはすごく一生懸命だし、向上心も高いと思っているので、そこは似ていると思います」

主演・藤木直人との撮影裏話

中沢元紀 写真:武馬怜子
中沢元紀 写真:武馬怜子

―――今回は藤木直人さんや松雪泰子さんなど、大人の方が多い現場だと思うのですが、現場に入る際に意識されたことはありますか?

「輪の中に入っていくのは得意なほうではないですし、たしかに若手が少ないので緊張しながら入ったんですけど、本当に皆さん柔らかい空気感で話してくださっています。なので、僕は本当に都丸としてやれるだけのことをやろう、という意気込みで現場にいますね」

―――雰囲気のいい現場なんですね。

「すごくいいと思います。藤木さん演じる土門先生はセリフが長いものも多いので、話しかけていいのかなという気持ちはあったんですが、むしろ藤木さんのほうから気さくに話しかけてくださって。僕は長いセリフの前は集中しないとできないので、すごいなと思っていました」

―――藤木さんとのお話で印象的なエピソードがあれば教えてください。

「藤木さんが釣りがお好きなので、やっぱり釣りのお話ですね。迫田(孝也)さんも釣りをやられるみたいで、今度みんなで一緒に行こうよ、みたいな話もしていましたね」

映画『国宝』で感じた、
悔しさとこの先目指すもの

中沢元紀 写真:武馬怜子
中沢元紀 写真:武馬怜子

―――1話が放送された直後ですが(取材時)、反響はいかがですか?

「家族から連絡が来ました。『出てたね~』って(笑)。いつもそうなんですが、役の感想というよりは作品の感想でした。

―――このあと放送される5話が、都丸がフォーカスされる回になりますが、台本を読んでいかがでしたか?

「いっぱい出てるなと思いました(笑)。すごくありがたいです。1話もそうだったんですけど、刑事役は捜査状況を報告するセリフなど説明台詞が長くて、5話はそれがさらに多くなりそうなので、がんばりたいなと思っています。撮影はもう少し先なんですが、いまから目を通しておいて、台詞に慣れていかないといけないな、と。

また、5話はイライラだけじゃない都丸のいろいろな表情が観られると思うので、そこは魅力的に見せていきたいなと思っていますし、ぜひ注目してほしいですね」

―――最後に、好きな映画についてお話をお伺いしたいのですが、最近観た作品で印象に残っているものはありますか?

「最近で言うと、『国宝』を観に行きました。一観客としてもワクワクしながらすごく楽しみましたし、役者としての目線も持ちながら観ているので、むずがゆい感じというか、うらやましいなと思いました。準備期間を1年半くらい設けてやられていたそうですが、自分はそれほどの時間をかけて1つの役に没頭した経験がまだありません。なので、悔しさもありつつ、いつかそういうこともやってみたいなと思いました」

【著者プロフィール:あまのさき】

アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。

1 2 3
error: Content is protected !!